2015.10.24

【ホイアン】洪水と共存してきた町、ホイアンの秘密に迫る!

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トゥーボン(Thu Bon)川のほとりにある世界遺産の町ホイアンは一大貿易港でもあった。上流の山々で採れた金や絹、下流域で採れた農作物は、この川を通ってここに集まる。ただ、川は10~11月に毎年のように氾濫する。住民はどう共存してきたのだろうか?
文・写真/隅野史郎

災難だけでなく恵みをももたらした?

洪水発生の原因 毎年9月ごろから、トゥーボン川の上流、クアンナム(Quang Nam)省ミーソン(My Son)の山々には大雨が降る。山中に溜まった水が1ヶ月かけて下流に下り、そこに大潮がぶつかると海の水位が上昇し川に逆流。海抜の低いホイアンに洪水が起こるのだ。 しかし、この洪水は山の養分を豊富に含んだ肥沃な土を田畑に撒き、ホイアンを豊饒な土地にしてくれた。近年は、治水やダムの建設で田畑にあまり水が流れなくなり、代わりに山からの土砂が川底に堆積して水深が浅くなり、川が溢れやすくなっている。

Hoi-An007通常のトゥーボン川

DSC02764L洪水時は、旧市街中心部のバックダン(Bach Dang)通り沿いの家屋の1階部分が半分くらい水に漬かることも

長い年月をかけて編み出された洪水対策

家屋構造の工夫 ホイアンの家屋は土台を数十cmから1m近く持ち上げて建てられており、少しぐらいの洪水では水が中まで入ってこない。住民は「家に浸水しなけりゃ洪水じゃない。ただ川が溢れただけさ」と笑う。 屋内に目を移せば、柱は地面に埋めずに石の上に置かれ、床は水はけを考慮し若干傾斜。間仕切りの下には排水用の隙間があり、コンセントの差し込み口も高い位置にある。 また、1階と2階の間の天井には穴が開いている。ホイアンの家屋は階段が狭いので、洪水などの時はこの穴を荷物の上げ下ろしに使う。

hoian-001荷物を2階に避難させるための1階の天井には穴が

hoian-008石の上に立つ柱

ホイアンの町って軽く坂じゃない!?

町がちょっと傾いている 旧市街のファンチューチン(Phan Chu Trinh)通りから南方のトゥーボン川に向けては、土地が傾斜している。これは洪水時の水はけを考慮したものだ。 また、旧市街対岸のカムナム(Cam Nam)島など、町のあちこちにかつての洪水でどこまで水位が上がってきたかを示す表示板が立っており、その猛威の程をうかがい知ることができる。

hoian-003傾斜した町並み。なお、台風時に屋根で風を割るために、建物の位置がずれている

市民のたくましさを垣間見る

洪水復旧大作戦 洪水後、3日くらいは町も汚れ、掃除や復旧作業に追われることになる。しかし、長年洪水と共生してきた住民たちは、笑いながら隣人に声をかけ合い、後片付けに励むのだ。そんな中、最初に復旧するのは市場。ホイアン市場自体は浸水しているが、路上に即席の屋台ができてすぐに商売がはじまる。ホイアンの人たちのたくましさを感じる。

hoian-004ホイアン市場は川沿いにあるので、復旧に1週間近くかかる

観光中に洪水警報が出たら!?
ホイアンの洪水は、鉄砲水になるようなことはほぼない。徐々に水位が上がってくるので、慌てずに避難しよう。こんな時に「小船で観光しないか」と誘う人もいるが、高額料金を請求される場合があるので注意。絶対やってはいけないのは、素足で水溜りに入ること。特に台風後の洪水では切れた電線があるので、感電死する人もいる。