ベトナム全国の通りには、歴史上の出来事や重要人物の名前などがつけられている。よく耳にする通り名の意味や由来について紹介
第1期国会代表の弁護士仏軍中尉から反仏部隊指揮官へ

タイ・ヴァン・ルン(1916年7月14日~1946年7月2日)は、弁護士で第1期国会代表。トゥードゥック(Thu Duc)県(現在のホーチミン市9区・2区・トゥードゥック区)出身。クリスチャンの知識階級一家に生まれ、妹と姪、甥はピアニスト。パリ大学で法律学の学士号を取得した後、パリの政治学学校と植民地学校で学んだ。フランス国籍を有する彼は、砲兵学校にも入学。4年間砲兵士官として軍隊に属し、中尉で退役した。軍役中には、仏泰戦争と第二次世界大戦にも携わった。
1945年3月にベトナムに帰国し、当時のサイゴンの控訴裁判所に勤める。同年6月、グエン・ヴァン・トゥー(Nguyen Van Thu)、ファム・ゴック・タック(Pham Ngoc Thach)、ルー・フー・フオック(Luu Huu Phuoc)らとともに先鋭青年部隊を創設し、同部隊の軍事訓練を担当した。
同年8月に起きた八月革命後の9月23日、フランス軍に捕えられるも逃げ切り、反仏運動に参加。トゥードゥック県の反仏運動委員会の委員長に任命され、「タイ・ヴァン・ルン軍」と呼ばれる県の反仏武装部隊を編成。こうした功績が認められ、翌1946年1月6日の総選挙で第1期国会の代表の1人に選出された。
同年、「タイ・ヴァン・ルン軍」の指揮を執っていたところ、フランス軍との争いに巻き込まれ逮捕。凄まじい拷問を受けながらも黙秘を貫き、30歳を目前にした同年7月2日、死去した。
ホーチミン市をはじめとする各地には、彼の名を冠した通りや学校が存在している。
石井 彩子
元ベトナム考古学徒。考古学はライフワーク。日々、どローカルなベトナムライフを満喫中。