ベトナムの日本人/佐々木将雄さん/動物病院院長

日本の技術や知識をしっかりと伝授し、 優秀なベトナム人獣医師たちに道を作りたい

IMG_0987 「日本では動物病院でする治療を、ここベトナムではペットショップで行っていたことには驚きました」。  5年前、観光でベトナムを訪れた際、「職業柄、つい立ち寄ってしまった」と、ペットショップに足を運び、想像を絶する状態に驚きを隠せなかったという獣医師の佐々木将雄さん。ベトナムでは数年前からペットブームになりつつあるが、治療施設が不足し、病気やケガをしたペットは捨てられてしまう現状や、ワクチン予防の認識がない飼い主が少なくない。また、ベトナムの獣医科大卒業生はこれまでに2万人はいるものの、就職先は大動物・水産関係、官僚関係がほとんど。小動物病院自体が少ないということもあるが、同院の市場調査によると、小動物病院への就職を考えているのは、年々増えているとはいえ、10%程度だった。 「ベトナム人の学生たちは熱心に勉強していて、優秀な人材が多い。それにも関わらず、彼らの知識が活かされるところが少ないのはもったいない」。 こうした実態を目の当たりにした佐々木さんは、「有能な獣医のために道を作らなければ。ベトナムの動物たちを何とかしてあげなければ」という使命に駆られ、ベトナムで動物病院の開院を決意。ホーチミン市国家農林大学との提携に加えて、日本の獣医学会を通じ、自身の思いに賛同してくれた林文明さん、上條圭司さん、川野悦生さんの3名とともにベトナム進出を目指した。 資金繰りやライセンス取得などの苦労をはじめ、設立までには紆余曲折がありながらも、2014年11月、佐々木動物病院をホーチミン市に開院。日本の設備が整い、清潔感に溢れた動物病院が誕生したと、ベトナム人獣医師や獣医学生の間で噂になり、病院には見学者が訪れることもしばしば。設備等の美しさに圧倒される者が多い中、手術を見学したベトナム人獣医師が開口一番、「日本の動物病院の設備や技術は素晴らしいが、この国でそういった機器を購入しても、使いこなせる技術を持っていない」と感想を述べたという。さらには、「ワクチンって、何ですか?」という質問もあった。これらの言葉を聞いて、がっかりするというよりも、ますます奮起したようだ。 「ペットブームの時代に追いつくためにも、ベトナム人の若い獣医師たちに日本の技術をきちんと伝えなければならない。彼らが開業するためにも日本で研修を行うなどの育成を積極的に行っていきたい。獣医学生や近隣の一般開業獣医師を 受け入れる制度を設けたいと考えています」。そう熱く語る佐々木さんのもとには現在、大学での講義依頼もきているようだ。 「利益を得るというよりも、国際貢献のために行っていきたい。運命というよりも必然性でベトナムに来たと思います」 2015年4月から菅野晃弘さん、服部さんが加わり、佐々木さんら日本人獣医師たちの熱意によって、ベトナムのペット産業の雇用拡大や動物愛護精神が高まっていくことに期待したい。
佐々木将雄 ささきまさお 1967年生まれ、長野出身。麻布大学獣医学部卒業。横浜にある藤井動物病院で3年勤務後、地元の長野で開院。約20年間、獣医師として活躍し、2014年11月、ホーチミン市7区にて、佐々木動物病院(広告P.183)を開業。 ウェブサイト:http://sasakihospital.com
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