伊藤忍のベトナムめし大全 /第72回 肉あん入り葉包み餅/Bánh Giò

2014-12-10 12.40.16プルプルのお餅とポロッした肉餡餅食感のマッチングが絶妙

今回ご紹介するお餅は、私がベトナムに住んでいた頃に、朝食として最もお世話になった料理です。一般的にベトナムでは、街に住んでいる人は朝ご飯は家では作らずに外で食べる習慣があります。様々な美味しい朝食候補が街中に溢れているので、私もベトナム人と同様に基本的には外で食べていました。しかし、時には寝坊して店や屋台にゆっくりと立ち寄る時間がない事も。そんな時は決まって道端の店でこれを2つ買って職場に向かっていました。蒸し器に入って温かい状態で売られているこのお餅、職場に着く頃には食べやすい温度になっていて、仕事前にササッと食べていたものです。 このお餅は「バインゾー(南部はバンヨー)/Banh Gio」と言う名前です。Banhは生地から作る固まりの物の総称、Gioは直訳すると「脚」という意味なのでそのまま訳すと不思議な名前となってしまうのですが、Gioとは餡に使う豚肉は脂の少ない豚の赤身の脚の肉を使うからなのだそうです。 そしてこれは名前だけでなく、形も個性的です。バナナの葉で三角錐の形に包まれていて、お餅の中は豚のひき肉餡とうずらのゆで卵入り。お餅と言っても、もち米から作るのとは違い、米粉とタピオカでんぷん粉を練って作るので粘り気のないプルンとした独特の食感です。 私の友人はこれを「煮こごりの様な食感」と表現していましたが、口に入れた時のほどけ具合がちょうどそんな感じです。お餅は、粉類に豚のダシや水、塩、油を混ぜて溶かし、火にかけて固くなってくるまで絶えずヘラで練りながらベースの餅生地を作ります。中に入れる餡は、豚の赤身のひき肉や刻んだきくらげ、香味野菜などを炒めて調味料で味付け。バナナの葉を折って、お餅の生地中にひき肉餡とうずらのゆで卵を閉じ込めるように成形しながら包み、最後に紐で縛って固定します。 これを茹でるか蒸すかして、加熱して固めればできあがり。お餅は豚のダシが効いていて、食べる度に旨味が広がります。口当たりも軽いので朝からぺろりと食べられてしまいます。 「一番お世話になった」、「寝坊した時の定番の朝食」ときたら、頻繁に私が寝坊していた事がばれてしまいますね。そのおかげなのか、このお餅は私の大好物となりました。

2014-12-10 12.10.59加熱されたバナナの葉の香りが食欲をそそる

伊藤忍 いとう しのぶ ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。 ウエブサイト:www.vietnamfoodnet.com
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