ベトナム全国の通りには、歴史上の出来事や重要人物の名前などがつけられている。
よく耳にする通り名の意味や由来について紹介
祖国を愛した反米主義の電気工、
ベトナムと共産圏各国の英雄

グエン・ヴァン・チョイ(Nguyen Van Troi、1940年2月1日~1964年10月15日)は、ベトナム戦争時代の反米主義者。クアンナム(Quang Nam)省ディエンバン(Dien Ban)県生まれ。ダナンで機械を学び、1956年サイゴン(現ホーチミン市)へ。発電所の電気工として働きながら、反米運動に参加していた。
1964年5月、当時の米国防長官ロバート・マクナマラを暗殺すべく、一行が通るコンリー(Cong Ly)橋<現ホーチミン市ナムキーコイギア(Nam Ky Khoi Nghia)通りとグエンヴァンチョイ通りの間に架かる橋>の爆破を命じられた。しかしこの計画は明るみになり、妻ファン・ティ・クエン(Phan Thi Quyen)と結婚してからわずか19日でベトナム共和国(南ベトナム)政府に逮捕された。
同年10月15日午前9時45分、各国報道陣や聴衆が見守る中、銃殺刑に処された。処刑の際にも毅然として「打倒アメリカ帝国! 打倒グエン・カイン(Nguyen Khanh、元南ベトナム大統領)! ベトナム万歳! ホー・チ・ミン(Ho Chi Minh)万歳!」と叫び、共産圏各国に大きな衝撃を与えた。死後、人民武装部隊の英雄の称号や勲章などが授与された。
死後50周年に当たる2014年10月には、様々な記念式典が開催された。ベトナムには彼の名を冠した通りや学校が多くあるほか、キューバには「グエンヴァンチョイスタジアム」が存在する。
なお、妻クエンによる手記『あの人の生きたように』は日本語でも出版され、ベストセラーとなっている。
石井 彩子
元ベトナム考古学徒。考古学とベトナム書道はライフワーク。日々はどローカルライフ。