伊藤忍のベトナムめし大全 /第71回 汁かけやわらか練餅/Bánh Đúc Nóng

FullSizeRenderスープに溶けそうなぐらい柔らかいお餅は、喉に詰まる感じも一切なく食べやすい

ベトナム料理を日本人に広める仕事をして長くなりましたが、今でも悩むのがベトナム料理の名前を、日本語で何とご紹介するのがいいかということです。ベトナム語を日本語に直訳してしまうと味気なくなることも多いので、分かりやすくも魅力的、しかしきちんとベトナム語の意味を入れつつも装飾しすぎず…となると、なかなか難しいものです。今回ご紹介する「バインドゥックノン/Banh Duc Nong」(Banh=生地物の総称、Duc=練る、Nong=温かい)」をそのまま訳すと、「温か練餅」となるのですが、これではお餅そのものが温かいイメージになってしまうので、このタイトルにしました。 まずは「Banh Duc/バインドゥック」についてですが、ベトナム全土にこの名前の入る料理が色々と存在します。米粉や米粉とタピオカでんぷん粉に水を混ぜた生地を鍋に入れて火にかけ、ヘラなどで混ぜながら加熱して餅状に固めたもの全般を指します。水分と粉の割合で餅の固さは変わります。水分を少なくして日本の餅のように整形して丸く固めたもの、餅を加熱した鍋をそのまま冷まして餅を切り分けるもの、水分を多めにして練ってトロリとしたまま食べるゆるいタイプのものとさまざまです。それぞれについて詳しくは、別の料理としてこのコラムでご紹介しますね。 さて本題のバインドゥックノンについて詳しくご説明しましょう。この料理はベトナム北部の料理で、柔らかいお餅に温かいスープをかけて食べる日本のお雑煮のような料理です。日本のお雑煮との違いは、お餅はもち米から作るものではなく、米の粉を(タピオカでんぷん粉を入れることも)ゆるめに水で溶いた生地を、上述の様に鍋で練って作った柔らかいトロリとしたものだという点です。 この独特の食感のお餅を器に盛って、上に具材をのせて温かいスープを注ぎます。具材は豚の赤身のひき肉、刻んだエシャロットや木耳を炒めたもの、さらには揚げた豆腐をのせることもあります。スープは豚から取ったダシに、塩や魚醤のヌックマムなどで味付けしたもので、トマトを加えてほんのり酸味を付ける事もあります。餅が少し変わると蟹ダシで食べる事も。これに揚げねぎと香草や刻みネギをトッピングして完成です。 スタイルは違ってもお餅と温かいダシ汁という組み合わせは、日本人が嫌いなはずがありません。ホッとする味で食べた人の心をとらえる事でしょう。

FullSizeRender(2)南部地方のバインドゥック。生地にココナッツミルクが入り、切り分けるスタイル

伊藤忍 いとう しのぶ ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。 ウエブサイト:www.vietnamfoodnet.com
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