
具材は鶏や牛のそぼろ、ソーセージ、鶏や牛の生肉、海鮮、しじみ、レバーパテ、チーズ、卵などから選べる

ベトナム料理と長く関わっていると、新しい料理ができて定着していく姿を見ます。20年弱で色々な新しい料理に出会いましたが、中でも数年前にベトナム南部から中部にかけてブレイクした路上フードがあります。
「バンチャンヌン/Banh Trang Nuong」(Banh Trang=ライスペーパー、Nuong=焼く)です。これは最近できたライスペーパーの新しい食べ方で、私は最初、ホーチミン市の路上や公園などで急に見かける様になったので気になって食べてみました。これは炭火の網の上でライスペーパーを焼きながら、卵を割ってスプーンでライスペーパーの上に広げていきます。さらにその上に炒めたひき肉、干しアミ、青ねぎ、揚ねぎなどを散らし、チリソースをかけ、最後に半分に折ってでき上がり。紙に挟んでくれるので、道端で食べるのにも丁度よいスタイルで、とにかく安い。学生などが気軽に食べられることで、一気に広まったようです。
このバンチャンヌン、前述のはサイゴン(ホーチミン市)スタイル。ライスペーパーのサイズや厚さも異なるので、最初から切ったライスペーパーを焼いて挟んで食べる(バンチャンケップ/Banh Trang Kepと名前も違う※Kep=挟む)ほか、パリッと焼いてから筒状に丸めたり、ごま入りのライスペーパーを使うなど、地域によってさまざまに発展したものが存在します。調べてみると、高原の街ダラット(Da Lat)の店のものがブームを巻き起こしたとの情報が多かったので、現地でチェックしてみました。
ダラットの街でも広場や道端のあちこちでライスペーパーを焼いている姿を目にしましたが、一番流行っているという店へ行ってみました。サイゴンのように折らずにオープンのままピザのような形で出てくるので、これをハサミでカットして食べるのです。カリッとした食感と香ばしさが後を引き、折りたたんでいるのとは違う感じで楽しめます。また、こちらの店には「バインチャンヌンイェオ/Banh Trang Nuong Deo」(Deo=軟らかい)という名前の、ライスペーパーをパリパリに焼かないで巻いたスタイルのものもありました。ダラットの路上の店では、パリパリに焼いてから巻いたものが多かったので、柔らかいバージョンはこの店のオリジナルかもしれません。
ビザなどのように洋風な感覚で食べられるスナックなのに、ベースがベトナムの伝統的な食材である米から作るライスペーパー。フランス統治時代からの料理などを見ても、ベトナム人がこういう発想を最も得意とするようです。

人気店には焼き手が複数いて、ひっきりなしに焼き続ける
伊藤忍 いとう しのぶ
ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。
ウエブサイト:www.vietnamfoodnet.com