伊藤忍のベトナムめし大全/ 第68回 とうもろこしのライスペーパー巻き揚げ /Chả Bắp

photo201409_00 以前、ダラット(Da Lat)に滞在した際、地元の人が行く飲食店エリアを散歩していると、「チャーバップ/Cha Bap」という看板を見かけました。ホーチミン市などでは見た事がない名前だったので、どんな料理か気になって店を覗いてみたところ、揚げ春巻きのようなものをライスペーパーに包んで、タレにつけながら食べているお客さんの姿が。「食べてみたい!」という衝動にかられましたが、その時は時間がなくて断念したのでした。 それから10年ぐらいの月日が経ち、その間ダラットに行く度に「チャーバップ」を思い出してはいたのですが、他にも食べるべきものが多すぎて、なかなか食べる機会に恵まれませんでした。しかし、つい先日、やっと念願叶って、食べてきました。 ダラットの「チャーバップ」は、「チャーラムバップ/Cha Ram Bap」(Cha=細かくした肉や魚介などを固めて作った食品、Ram=中部で揚げるという意味)とも呼ばれ、とうもろこしの実を薄く削り、刻んだ香味野菜や調味料を混ぜて薄手のライスペーパーで包み、油で揚げたもの。これをさらに生野菜とハーブといっしょにライスペーパで包んで、味噌ダレを付けて食べるのです。 お店では豚肉のすり身焼きもおいてあり、タレの特徴などからも中部の料理なのだなと思いました。ダラットは元々、少数民族が住んでいた地域でしたが、フランス統治時代にフランス人によって開拓され、北部や中部からベトナム人が移り住んでいました。そのため、ダラットではベトナムの色々な地域の食べ物が食べられます。さらに、中部地方では、とうもろこしの栽培が盛んで、ホイアンやフエなどでは削ったとうもろこしを砂糖と煮たぜんざいの「チェーバップ/Che Bap」が有名。そのことからも、とうもろこしが取れる地域ならではの料理だとわかります。 調べてみると、「チャーバップ」は中部一体で食べられている料理で、同じ中部でも地域によって少しスタイルが変わるようです。とうもろこしだけで作る地域、豚のミンチ肉を混ぜる地域、春雨や木耳なども入れて揚げ春巻きのような生地にする地域。また、タレも色々で、ダナンではダラットと同じく味噌ダレですが、クアンガイ(Quang Ngai)では魚醤ヌックマムベースのタレで食べるなど。 また別の地域のものも食べてみたくなってしまい、いつまでもベトナム料理探究が続いてしまいます。
photo201409_02具材をライスペーパーでクルクル巻いたような細目のスタイル
伊藤忍 いとう しのぶ ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。 ウエブサイト:www.vietnamfoodnet.com
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