メディカルトーク/第99回 「常位胎盤早期剥離」

メディカルトーク症例

22歳の産婦が産気づいた状態で来院。心音に異常がなく、子宮がまだ開かないので、帰宅。その夜に、激しい腹痛で救急入院。常位胎盤早期剥離と診断され、緊急治療を行った。母体は救えたものの、胎児は死亡した。

今回のドクター

ヴォー・チウ・ダット(Vo Trieu Dat)医師/FV Saigon Clinic
①常位胎盤早期剥離とは 胎盤は子宮の壁に張り付いており、お産が終わるまではへその緒(臍帯)を通じて胎児に酸素と栄養を補給します。通常は出産後、自然、に子宮から剥がれますが、まだ胎児が子宮内にいるのに、胎盤が子宮から剥がれてくるのが「常位胎盤早期剥離」です 胎盤が剥がれると子宮の壁から出血し、胎盤後血腫という血の塊が形成されます。胎盤が剥がれると、胎児への酸素と栄養の供給が止まり、胎児が死亡に至る場合もあります。 また、胎盤後血腫のために母体の血液の状態が変化して血が止まらなくなり、出血により母体の生命を奪うこともあります。 第2子目以降で、妊娠後期3ヵ月や陣痛中に起きることが多く、およそ0・38~0・60%の割合で発症します。 ②症状 突然の激しい下腹部痛が起こります。子宮から痛みが始まり、次第に腹部全体に広がります。痛みは継続的で長く続く傾向があります。他に性器出血やめまい、子宮の異常な鼓動、子宮が板のように硬くなる場合もあります。 ③発症の傾向と要因 原因はまだ不明ですが、次のことが発症の要因・傾向として考えられます。 ・交通事故などの外傷、羊水過多の破水。 ・慢性的な高血圧症、妊婦高血圧症。 ・前期破水症が発生した妊婦は、常位胎盤早期剥離の発症率が3倍。 ・複数回の流産歴がある。軽症の常位胎盤早期剥離があった。 ・喫煙する妊婦は、常位胎盤早期剥離の発症率が通常の2倍、など。 ④異常を感じたらすぐに受診を 妊娠中は定期的に受診し、胎動が少なくなったとき、おなかが異常に張った時は、すぐに病院へ行きましょう。また、子癇前症や慢性腎臓炎、高血圧などの場合は、早めの治療が大切です。
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