伊藤忍のベトナムめし大全/第66回 西湖風海老の天ぷら/Bánh Tôm Hồ Tây

どっさりとのっている揚げものを見て少し構えるが、たっぷりの生野菜やハーブと一緒に味わうので、意外とたくさん食べられる
ハノイ中心部の地図を見ると湖が多いことに気が付きます。市内北部ある大きな湖「西湖/ホータイ/Ho Tay」(Ho=湖、Tay=西)は、今回ご紹介する料理に関係する湖です。さて、湖と料理とはどんな関係があるのでしょうか? このエリアの名物料理を作ろうという流れでできた料理なのです。 西湖の周りは地元民の憩いの場でもあり、観光名所でもあるので、昔からたくさんの人が集まって来る場所でした。そんな人々をターゲットに何か商売ができないかと考える人が出て来るのは普通のこと。ある時までは飲み物を売る人ぐらいしかいなかったそうですが、「これだけ人が集まって来るのだから何かここでゆっくり食べられるものを売れば、ここに来る人達も嬉しいし商売もできる」と考えた人がいました。 ベトナム人には「アンチョイ/An Choi(An=食べる、Choi=遊ぶ)」という習慣があり、これは人と会った時におやつ的なスナックなどをつまみながら、場所と会話、食べることを楽しむこと。せっかく家族や友人とここに来たならば、アンチョイできたら最高だと考えたのです。さらには、西湖に関係のある食材を使えば、これを食べにわざわざ来る人もいるだろうと、当時西湖で獲れる海老を使って作られたのが、今回のテーマ「バイントムホータイ/Banh Tom Ho Tay(Banh=生地の総称、Tom=海老、Ho Tay=西湖)」です。 こちらの料理に私は天ぷらという日本語訳を付けましたが、どちらかと言えば、見た目はかき揚げに近いです。どれもみんな同じ丸い形(半分に切って出て来る店もある)をしていますが、これは丸い専用の型を使って生地を揚げるからなのです。インディカ米の粉がベースのため、小麦粉を使う天ぷらよりもクリスピーな食感に仕上がり、生地はとにかくカリカリです。生野菜やハーブといっしょに魚醤ヌックマムベースの甘酸っぱいタレにつけて食べます。 この湖畔で生まれた料理は、現在は西湖とその隣のチュックバック湖の間のタンニエン(Thanh Nien)通りにある「Banh Tom Ho Tay」という名前の大型レストランで食べられます。また、西湖に突き出ているエリアにある「西湖府/Phu Tay Ho」参道沿いには小さな食堂が並び、店頭のショーケースにはこの海老の天ぷらがズラリと並んでいます。現地の人に混じって、こちらの料理でアンチョイするのもなかなか良いものですよ。
Exif_JPEG_PICTURE海老の天ぷら専用の型。生地を流して油に投入すると生地の水分が抜けて縮み、自然と型から外れる
伊藤忍 いとう しのぶ ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。 ウエブサイト:www.vietnamfoodnet.com
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