伊藤忍のベトナムめし大全/第62回 鶏のもち米酒鍋/ Lẩu Gà Rượu Nếp

1鶏とスープを味わうだけで、見かけもシンプルな鍋。お酒の甘い香りが漂う

私はお酒があまり飲めないのですが、お酒を使った料理やお菓子は大好き。アルコールに弱い体質だけれど、お酒の味や風味は好みなのです。今回ご紹介するのは、ベトナム北部のもち米酒をたっぷり使った鶏鍋料理「ラウガーズィウネップ/Lau Ga Ruou Nep」(Lau=鍋料理、Ga=鶏、Ruou=酒、Nep=もち米)です。   この料理は名前の通り、鶏肉をもち米から作ったお酒や水で煮て作ります。最近、日本のベトナム料理店でも米やもち米が原料の蒸留酒(焼酎)が飲めますが、この料理に使うもち米酒は蒸留させていない「ズィウコットネップ/ Ruou Cot Nep」(Cot=原液)を使います。   蒸したもち玄米に麹を合わせて発酵させただけの状態なので、日本の濁り酒のように白く濁っていて、もち米の粒もそのまま入っている状態です。店によっては、下味として、お酒を絞った酒粕のもち米粒を鶏にまぶし、お酒、水などで煮込むこともあるようです。骨ごとぶつ切りにした鶏はこれらと一緒にじっくり煮込んで出来るため、お酒のアルコール成分はすっかり飛んでいます。煮汁のスープは、鶏とお酒の旨味と甘味の相乗効果で、とにかく絶品。   まずは煮込まれた鶏肉を大豆醤油の「シーザウ」(Xi Dau=醤油)に付けて食べつつ、他の物は入れずにスープをしっかりと味わったら、そこに野菜を入れてサッと煮て食べます。この鍋にはヨモギやノコギリコリアンダー、青ねぎなど香りが強くて味のしっかりした野菜を合わせます。ほんのりと甘みのある柔らかで優しい味のスープには、しっかりと主張の強い野菜がよく合います。   また、ベトナムの鍋は麺を合わせて食べるので、米麺のブンを添えたり、庶民的な店では鍋の終盤にベトナムの昔ながらの袋麺(インスタントラーメン)の麺だけを入れて食べたりします。   この鍋料理はハノイの鍋屋台などのメニューでもよく見かけますが、私はいつも鍋の専門店で食べています。ハノイ在住の友人からその店を紹介してもらって以降、その美味しさにすっかりハマってしまい、ハノイに行く度に何度も食べ重ねています。確実に私が好きなベトナム料理ベスト10の中にこれは入るでしょう。いつもこれを食べながら、「お酒を美味しく飲みながら、鍋をいただいたら最高だろうな」と思うのですが、やはりアルコールを受け付けない体質のため、それは叶わないので仕方がない。いつも鍋だけをとにかくじっくり味わう私です。
3ズィウコップネップは乳酸菌飲料の様な感じの色と質感
伊藤忍 いとう しのぶ ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。 http://www.vietnamfoodnet.com
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