男のローカルひとり飯／第26回ミーごいすー

本日は路上青空風呂椅子系の店に訪問。こちらではミーゴイ（即席麺）のミーサオ（炒め麺）が頂ける。この国では予め茹でておいた即席麺を炒めたり、鍋物に入れたりするなど外食店舗でも即席麺を利用する店が多い。即席麺はどう考えても安っぽい味わいにならざるを得ない上、完全な路上店舗は当たりの確度が比較的低いが、当店はホーチミン市きっての事情通の勧めだったので試してみることに。フライパンに麺と具材を入れ、おばちゃん店主が家で調合したと思われる謎の調味料を加えて炒め始めると、焦げた醤油のような香ばしい香りが食欲をそそる。一口頂くと、即席麺のジャンク感とピッタリ寄り添ったベトナム的ソース焼きそばの甘く濃厚な味わい。輪切りのチリは、ダイレクトな辛味があまりに舌を刺激するため普段はあまり使わないが、こちらの少々甘みを感じる麺と共に頂くとなぜか良い塩梅の辛味のアクセントになる。マグロの大トロの握りにはわさびを大量にかましてもたいして効かないのと同じ道理だろう、などと他人に言っても共感を得られそうもないことを連想しながら食べ進む。チリソースをまわしかけると、ジャンク感が重層的に積み上がる。そこにぎゅっと効く生のチリの刺激的辛さ、たっぷりと入った牛肉の旨味、玉ねぎのシャキシャキとドライな辛味、青菜の渋み、ソースの香ばしさに鼻から抜けるパクチーの青い香りが加わり、全てが渾然一体となったジャンクな多重奏が完成。たったひとつしかないコンロとフライパンの中で、ここまでの小宇宙が形成されている。凄い即席めんの世界だ。