2013.11.06

人間味あふれる造形美/ベトナムの仏像たち

「●●さんにそっくり」。ベトナムの仏像を見て、そんな感想を持つ人は多い。息遣いが聞こえそうな、「人生」まで透けて見えそうな、そんなリアルな仏像に出会えるベトナム。人間味あふれる仏像たちと、じっくり向かい合う旅に出よう。

監修/大西和彦、撮影/大池直人&ベトナムスケッチ編集部

ButThap_0027ベトナムの寺に多い、2体の巨大な護法像。写真はブットタップ寺のもので、17世紀頃の作と伝えられている。日本の金剛力士像に似ているものの、2体とも口を閉じている代わりに(?)足元の獅子の口が阿吽(あうん)になっている。 歴代皇帝が仏教を保護したこともあり、ハノイを中心とするベトナム北部には多数の歴史ある寺がある。 日本と比べたベトナムの寺の特徴は、安置されている仏像の数がおびただしいこと。ご本尊を中心に左右や前方に配された、様々な仏像や寺への寄進者たちの肖像彫刻に加え、人間が死後受けるとされる審判の際の裁判官である「十王像」や、修行僧を表す「十六羅漢像」などがずらりと並ぶ寺も多い。それらは実に人間臭い表情で、ひとりひとりの性格の違いさえ感じられるほどだ。「職場では厳しいけれども、家に帰れば子煩悩」、「失敗も笑って許してくれそう」、「寡黙だがデキる上司」…。そんな想像をしながら見て回るのが、ベトナム仏像の楽しみ方かもしれない。

参考文献/伊東照司(2005)『ベトナム仏教美術入門』雄山閣

ベトナム仏教美術の 至宝 たちリアリズム彫刻の極致個性あふれる面々をご覧あれハノイ周辺・仏像の歩き方
人間味あふれる造形美 ベトナムの仏像たち