29屋的越南恋愛コラム/ナイトスポットで出会った遊び人に、/何度も引っかかってしまう貴女たちへ/第24回

毎日が「宴」であれば、 感覚は麻痺して当然?

中世ヨーロッパに魔女の宴サバトがあったように。また、我が祖国日本でも、時代の変革期において、踊念仏や、「ええじゃないか」が流行したように。とかく、閉塞した時代や環境において、酒や音楽や集団ヒステリーが鬱屈した若者の心身にシンクロした際にもたらす精神高揚感というのは、問答無用で楽しいものらしく、簡単に言えば「ナウなヤングがディスコでフィーバー」なのである。 ローカルテレビ制作のトレンディなドラマを観ても、ここベトナムでも、遊び人がズンドコと夜通し騒ぎまくるのはクラブ(‘ラ’の字にアクセントがある方)と相場が決まっていて、ホーチミン市内のあちらこちらで、貧乏でダサいボクのような妻帯おっさん外国人なんぞ入場お断りな御洒落スポットが、今夜も隆盛を極めている昨今。 地元人のみならず、仕事上ストレスの多い日本人の若い独身女性にとっても、日々のウサを格別の労苦なく、頭を使わないで単純に生理的解消ができるという点では、実にお手軽かつファンキーなスポットといえる。 だが、「かっこいいベトナム人男性(または外国人)とクラブで知り合って恋人になったと思ったら、3ヶ月ももたずに捨てられた」とか、「イケメン彼氏が、私には『仕事だ』と言いながら実はクラブでナンパをしているらしい。腹が立つ!」という話を、少なからず耳にする今日この頃。 はっきり言って、おまえら全員バカじゃなかろうか。猫に鰹節の見張り番をさせておいて、「どうして食べちゃったの!?」なんていうようなもんじゃないの? としか思えないのである。 「枳棘叢中鸞鳳の住む所に非ず」 『三国志』の序盤で関羽が劉備を叱り飛ばした、「カラタチやイバラ、草むらの中には、鳳凰のような立派な鳥は住んでない」という名言。逆を言うと、「立派な鳥を探したいのであれば、それなりに整った場所で探せ」ということに尽きるのではなかろうか。 本来、ナンパと遊びの場所であるクラブで出会った人間に、誠実さと冷静さを求めるのほうがムチャである。万一、優良物件が紛れ込んでいる可能性があるとしても、自分が酒と音楽と色欲に酔っ払った状況下では、鳳凰とコウモリの見分けすらもつかないだろうし、相手だってスタートの時点から「これは遊び」と割り切っているはずだ。 獲物を探す場所を間違えている上に、自分の観る眼も曇っていたら、カスをつかんで当然。くやしければ、ガッツで鳳凰が行列を作るような優良物件に自分がなるか、「遊びは遊び」と割り切った上で飽きてむなしくなるまでクラブの流儀に徹するか、だ。
29屋(にくや) 食材&弁当屋の店主。本業の傍ら、かつては「29屋に訊け!」など本誌人気コラムを担当。本コーナーでは、ベトナム恋愛模様をちょっぴり辛口、ときどき優しく(!?)、生あたたかい目で考察する。
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