2013.06.18

1周たったの1kmほど。箱庭のようなホンザウ島

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ハイフォンから車で約30分のビーチリゾート、ドーソン(Do Son)。その沖合いに浮かぶのがホンザウ(Hon Dau)島だ。外周が1kmほどの小さな島だが住人もおり、祠や灯台など観光ポイントも備えている。機会があれば、訪ねてみて。
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原生林散歩で、マイナスイオンを補給

ホンザウ島 Dao Hon Dau 2013年5月5日(日)現在、島への定期船はないので、観光エリア「ホンザウリゾート」の船着場に停泊するボートと個別交渉が必要。船会社や時期により料金が変わるが、小さなボート1艘に付き往復80万VND(約3850円)前後~。灯台までは、原生林で覆われた坂道を、木漏れ日に包まれながらの散策となる。

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(上)桟橋もミニサイズ。地元の人がよく釣りをしている (下)ベトナム自然遺産の指定を受けているガジュマルの木
料金:(入島料)6000VND(約30円) 問い合わせ:東北部航海安全保障事業部 / Xi Nghiep Bao Dam An Toan Hang Hai Dong Bac Bo 電話:(031) 383 7054 Hon Dau Resort 住所:Khu 3, Van Huong St., Do Son Dist. 電話:(031) 386 4939 営業時間:24時間 www.hondauresort.com

100年以上の時を経たクラシックなたたずまい

ホンザウ灯台 Den Bien Hon Dau 小さな島の高台に建つ灯台は、まさに海のランドマーク。桟橋からの1本道を登ると、迷うことなく着く。 1892年、フランスによって設計・着工され、1896年に完成。島の標高も併せた67mの高さから、周囲40kmを照らしていたが、現在は現役を退いている。 木製の階段を昇りきった、展望テラスからは、ドーソン湾を広々と見渡せる。入口には、往時の巨大なガラス製ライトを展示。内部には古い照明器具や、戦時中の通信機器なども置かれている。

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(上)古い映画に登場しそうな、ノスタルジー漂う外観(下)かつて海を照らしたガラス製のライト

もしかしてチャン将軍? を祀る

ナムハーイタンヴオン祠 Den Nam Hai Than Vuong 桟橋の横手にあるこの祠には、とある伝説が残されている。 13世紀、ベトナムを中国から護ったチャン・フン・ダオ(Tran Hung Dao)将軍の軍服をまとった遺体が、島の漁師によって浜へ引き上げられた。本物の将軍かどうかわからなかったため、そのまま一晩安置したところ、周囲にシロアリが大きな墓穴を掘ってしまった。慌てて島民たちが建てたのがこの祠だという。 今では、出漁前の地元漁師たちが、漁の無事を祈りにやってくる。旧暦の2月8日には島をあげて祭りが開催され、多くの人でにぎわう。

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小さな島のわりに祠の敷地面積が広い。参道には路上売店があるので、船が出るまで休憩しよう

COLUMN : ホンザウ島の日本人

❶ホンザウ島は、林芙美子の小説『浮雲』(1951年発行)に登場する。ヒロインは1943年、ベトナムで働いていたという設定だ。 「ドウソン湾の紅黄ろい海の色が、なつかしく瞼に浮ぶ。ドウソンの岬の、白い灯台や、ホンドウ島(注:ホンザウ島のこと)のこんもりとした緑も、生涯見る事はないだろうと、ゆき子は、船から焼きつくやうに、この景色に眼をとめてはゐた(後略)」。 当時のホンザウ島は、日本人が訪れてもおかしくない場所だったことが察せられる。 ❷1950年頃には、島に工藤(ひさし)さん(故人)という日本人が住んでいた。日本の仏印進駐時代、ホーチミン市にあった日本人のための専門学校「南洋学院」を卒業し、仏印軍に参加。除隊後、帰国せずにホンザウ島へ渡り、灯台守を務めたという。南洋学院の同窓生だった亀山哲三氏の著書『南洋学院』(芙蓉書房出版、1996年)に、彼についての記述がある。かつて、この美しい灯台を日本人が守っていたと知ると、より感慨深いものを感じる。