伊藤忍のベトナムめし大全/第53回 豆花(豆腐花)/Tàu Hũ (Đậu Hủ / Tào Phớ)

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伊藤忍のベトナムめし大全

今回の料理のタイトル、日本語に比べてどうしてベトナム語の名前がたくさん書いてあるの? と思った方も多いでしょう。今回ご紹介するのは少し前に日本でも流行した、石灰で固めたゆるく柔らかい豆腐の「豆花」。ベトナム全土で食べられているものなのですが、地域によって食べ方やベトナム語での呼び名が異なります(さらに細かく言えば、もう数通りあります)。 これは元々中国から伝わり、現地でも「豆花、豆腐花、豆腐脳」など地域によって呼び名が異なり、その漢字をベトナム語に置き変えたり、中国語の響きをベトナム語のアルファベットで表したりするので、色々名前が存在するわけです。 「豆花」は、さらに中国本土から華人の住む地域に広まっていきました。日本で流行ったのは台湾や香港風のもの。現地に行くと甘いだけでなく、しょっぱいタレや具をかけますが、華僑によってベトナムをはじめアジア諸国に広まったのは、甘いシロップをかける食べ方。広東風の茶色い砂糖で作る生姜風味のシロップや、白い砂糖で作る透明のシロップのどちらかをかける食べ方が主流の様です。 ホーチミン市に住んでいた頃、朝に私の家の前をこの豆花を天秤にのせた売り子がよく通り過ぎていました。その人を呼び止め、鍋から茶碗に豆腐を盛り、熱々の茶色い砂糖で作った生姜風味のシロップ、ココナッツミルクのソースをかけてもらって、よく食べていました。これはホーチミン市などの南部での食べ方で、「タウフー/Tau Hu、ダウフー/Dau Hu」と呼ばれます。 この食べ方にすっかり慣れていた私。当時まだ数回しか訪れていなかったハノイの街を訪問した際、道端の豆花屋の前を通りすぎて、豆腐が入った鍋の横にとても良い香りのする花が入ったシロップの存在に驚きました。北部では白い砂糖で作った透明のシロップに、花のある季節にはジャスミンやザボンの花を入れるのです。ハノイでは「タオフォー/Tao Pho」と呼ばれています。 一方、ホイアンやダナンなどでは南部同様の生姜風味のシロップですが、シロップや豆腐も南部よりは薄くて穏やかな味で、ココナッツミルクはかけずに食べます。 元々はベトナムの食べ物ではありませんが、北、中、南の各地方でそれぞれ一番マッチしたスタイルで伝わっていて、どれもその地の気候で食べると美味しく、甲乙つけ難いですね。 6 北部の豆花は南部よりもゆるい。花入りシロップ、貝殻で豆腐を薄くすくうなど、南部とは違う風情がある
伊藤忍(ベトナム料理研究家) 2000年より約4年間のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のメニュー開発、執筆を中心に活動。2011年7月に新作『ベトナム×ハノイ36 通りグルメ』(情報センター出版局)を出版。詳しくはホームページ(www.vietnamfoodnet.com)を。
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