ベトナムの日本人/中根里美さん/パティシエ

家族の健康やしあわせを思う気持ちが原点。 素朴な手作りロールケーキを皆さんに届けたい

4 ベトナムの日本人 「娘たちの喜ぶ顔を思いながら作っていたケーキと、根本的な思いは一緒なんです」。 ロールケーキ専門店「ジャムット」を設立し、手作りケーキやジャムを販売する中根里美さん。将来的に娘のどちらかと一緒に暮らす計画を立てていたといい、次女のベトナム人男性との結婚を機に来越した。 「せっかくだし、お母さんの好きなことをやってみたら?」という娘の一言に、真っ先に思い浮かんだのがケーキ作りだった。 素朴なロールケーキは、中根さんが昔から大好きなケーキ。ところが、着色料たっぷりのバタークリームを使ったケーキが主流のベトナムでは、「見た目が地味で買おうと思わない」と指摘されたことも。 「譲れない部分を変える気はないけれど、それ以外は柔軟に対応したい」と、苺と生クリームをトッピングしてみると喜んで食べてもらえた。 日本から持参した材料は、チョコレートと抹茶だけ。そのほかは、娘夫婦にサポートしてもらいながら現地調達している。 「ベトナムにあるもので何とかしよう、と決めてしまえば、意外とできるもの。材料探しも含め、今は全てが楽しくて仕方がないんです」 と表情を輝かせる。 中でも心を躍らせるのは、瑞々しい旬の果物が並ぶローカル市場。ケーキやジャム用に果物を大量買いするため、市場の女性たちともすっかり顔なじみだ。 「どこにいても自分なりの楽しみを見つけて、人生のステップアップに役立てないと!」。 キャリーバッグをお供に、臆せずベトナムに足を踏み入れていく。 実は以前、自身と娘のひどいアトピー性皮膚炎に思い悩んでいた時期があった。「健康じゃないと楽しくない」と一念発起し、栄養学を勉強。娘たちのお菓子を含めた食生活を徹底的に見直し、完治させた経験をもつ。 「『お母さんが家で焼いていたケーキを、みんなが食べてくれるなんて不思議だね』と、娘とよく話すんです」とにっこり。 家族の健康やしあわせを思う気持ちが「ジャムット」の原点だ。日頃の食卓から販売する商品に至るまで、「からだに悪いものは使わない」というシンプルな考えを貫く。 今春からスタートしたお菓子教室は、ベトナム人も参加可能だ。 「社会が発展していく中で、食べ物に対する意識も自然と変わっていくはず。その過程で、食べ物とからだの関係や、ひと手間かける大切さをベトナムの皆さんにも伝えていけたらと思います」。 手土産に持たせてくれたロールケーキの、ふわふわとした食感と小豆の自然な甘み。在住日本人はもちろん、新たな「食」の楽しみをベトナム人にも届けてくれることだろう。
中根 里美 なかね さとみ 1961年、三重県生まれ。日本では、パナマ伝統手芸の講師として活躍。来越後の2012年3月、「ジャムット/Jamut」を設立。インターネット注文のほか、「エコパーク/eco park」内の自宅ではお菓子教室も開催中。詳細はウェブページへ。 http://www.facebook.com/JamutSao
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