ヴィジュアル☆ベトナム/WHY IS THE NUOC MIA GIRL SO UGLY? /ヌックミアの看板娘はなぜブサイクなのか

11 ヴィジュアル☆ベトナム彼女の姿を、あちこちで見かけたことがあると思う。チョロン、ヴンタウのビーチ、フーン川沿い、メコンの埃っぽい市場などで。 サトウキビジュース「ヌックミア」の看板娘は、ベトナム各地に派遣された爪をもつ女一族の一員だ。彼女に控えめなところは全くない。ドラァグクイーンといっても通用するほどだ。髪はポリエステル製のかつらのように逆立てられ、青や黄色でハイライト。輪郭は太くベトベトした線で描かれ、化粧はケバく、首の周りにはふさふさが膨れ上がり、整形手術に失敗したかのような鼻、茹であがったロブスターのような赤ら顔。 おまけに、このかわいそうなヌックミア看板娘には指がない。太古の甲殻類のような2つの爪はある。必要以上に大きいゴムのようなこれらの爪で、サトウキビジュースのグラスを握っている。 彼女は屋台の下から流し眼を送って誘いかける。彼女の周りのサトウキビ、トゲバンレイシ、ニンジンは尖っていて手裏剣のようだ。髪は電気椅子にかけられたかのように飛び出している。恐ろしい女だ。 だが…。この女性ほど私が夢中で追いかけた人は他にいない。ベトナム中を駆け回り、彼女の謎を解き明かそうとした。謎とはこれに尽きる。「なぜヌックミア看板娘はブサイクに描かれているのか」。 かなりの数の屋台主に尋ねてきた。大半の場合と同様に、ドンナイの片田舎の国道沿いの女性は、屋台の看板娘がブサイクとさえ認識していなかった。私が2回尋ねて、ようやく気付いたくらいだ。「まあ、ねえ、そう言われてみると、ちょっと醜いかもね。でもそういうもんなんじゃない」。 そうだろうか。ベトナムは絵画の腕が立つ国だ。美術学校の卒業生は、無数のデッサンを描いてきた優秀なドラフトマンばかりだ。 だが、そんなことはよい。ヌックミア看板娘はとても忙しい職人たちによって殴り描きされたのだろう。彼女は装飾の一部でしかない。屋台が南国的でサトウキビジュースらしく、運転手の目を止められれば、それでいいのだ。かわいそうな看板娘は、簡単にパイナップルにとって代わられてしまう程度の存在なのである。
Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学・日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 www.suehajdu.com facebook: Sue.Hajdu.Projects
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