ヴィジュアル☆ベトナム/PROMENADING AND THE PLEASURES OF BEING LOOKED AT/散策と見られることの快感

ヴィジュアル☆ベトナムレコンキウ(Le Cong Kieu)通りの骨董屋で過去のカビ臭い宝物を探し出すのに何時間も過ごしたことがないだろうか。そんな時、ドンコイ(Dong Khoi)通りがカティナ(Catinat)と呼ばれた時代の写真に出会うことがある。サイゴン大聖堂からサイゴン川までの道をゆったりと散歩することが、日曜の午後の習わしだった時代。 カティナ通りの高級ブティックを眺めながらウィンドウショッピングをし、カフェに集まる上流社会の人びとを見つめるのがサイゴンっ子の習慣だった。上流社会の人々も彼らをじっと見返す。散策は見るだけではなく、見られるものでもあった。そんな散策がお洒落だった1940 年代から1960 年代には、そんな写真が大量に撮られたようだ。「見つめる行為」について述べた先月号とは反対に、今回はこれらサイゴン社会の歴史の断片から明らかな「見られることに」ついて話したい。 これまでに見つけた数多くの写真から判断するに、サイゴンで最も人気だった撮影スポットは、市民劇場の斜め前にあった建物「エデン」のジブラルカフェの前だったようだ。エデンの近くを通りかかると、路上カメラマンが近付き写真を撮る。その場で料金を支払い、数日後にフォトスタジオでプリントを受け取るのだ。 写真は歩く姿を捉えた、きままなスナップショットのようだが、この時代は誰もがポーズを決めるベテランだったことを忘れてはいけない。アオザイ姿の若い女性、息子の手を優しくしっかりと握る父親、見栄えがするサングラスと丁寧にプレスされたスーツでキメて歩く若者たち…。誰もがばっちりお洒落をし、都会人的な楽しみの象徴となるよう意識した。 写真はその記念だが、実際に散策する姿を見られることが同じように大切だったのだろう。エデンはヴィンコムセンターとなり、先日初めてのクリスマス撮影の時期を迎えた。カティナ風の散策は誰もしないが、クリスマスツリーのディスプレイの前で人に見られることは重要らしい。彼らのうち、過去と同じ行為を繰り返していると気づいているのは何人くらいだろう。
Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学・日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 www.suehajdu.com facebook: Sue.Hajdu.Projects
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