伊藤忍のベトナムめし大全/第48回 揚げ豆腐のねぎ浸し/Đậu Phụ Rán Tẩm Hành

vietmeshi_2013_01 伊藤忍のベトナムめし大全「簡単で、スピーディー、ごはんによく合う北部の庶民的な料理です」 私がベトナム南部のホーチミン市に住んで料理を勉強していた頃、北部料理も勉強したいと思い、ベトナムの料理研究家がベトナム料理のレクチャーをしているビデオを見たら、その料理をこう紹介していました。 「ダウフーザンタムハン/ Dau Phu Ran Tam Hanh」(Dau Phu =豆腐、Ran =揚げる、Tam =浸みる、Hanh =ねぎ)。ベトナム版の揚げ出し豆腐のような料理です。 作り方ですが、まずは豆腐を切って油で揚げます。以前もご紹介しましたが、ベトナムの豆腐はにがりでなく、大豆が水に溶けると発生する酸を使って豆乳を凝固させます。重石をして水を切って作るので、固くしっかりとしています。そのため、水切り入らずで油で揚げるのがとても簡単なのです。 豆腐を揚げている間に、漬け汁を作ります。ボウルにカットした青ねぎ、魚醤ヌックマム(Nuoc Mam)、砂糖を入れ、熱湯を注ぐだけ。こうすることで、ねぎに熱が加わり、良い香りが漂います。ヌックマムだけではしょっぱいので、少し塩気を押さえる程度に砂糖を少量加えます。 その漬け汁に揚げたての豆腐を入れて漬けるだけ。豆腐を揚げて水分を追い出しているので、そこにこの漬け汁がしっかりとしみ込むのです。 そのビデオを見て実際に自分で作って食べたのが、私のこの料理のデビューだったのですが、甘い南部の料理に慣れすぎていた私にはとても衝撃的な味でした。南部の料理のように甘味がなく、そして漬け汁の味が飲めるほどの濃さであったこと、穏やかに香るねぎ、その繊細な味に、和食を食べているような気分になったのを覚えています。豆腐に魚のダシ、日本人には馴染みのある組み合わせですからね。 その後は何度となく滞在した北部で、北部料理にもしっかりと触れることができたのですが、この料理も作り方は色々あるようです。豆腐を揚げた油を少し取り、ねぎに熱い油を回しかけて作ったねぎ油を、漬け汁に漬けた豆腐にのせる方法や、漬け汁は湯でなく水で作る人もいます。もちろん湯や熱い油を使う方が、ねぎの香りをしっかりと活かすことができます。 私の場合、野菜やきのこを素揚げにして、よくヌックマムの漬け汁に浸けて食べています。日本料理の揚げ出し豆腐や野菜の揚げ浸しだと、わざわざ出し汁を用意する必要がありますが、塩気と旨味が一体化したヌックマムならば、それだけでいいのです。こういうベトナム料理の発想は私の料理の幅を広げてくれます。
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ベトナム料理では、よく青ねぎが使われる。軽く熱を加えて香りを出したり、香りの強さの異なる葉と白い部分を別々に使ったり、香りにこだわるあたりがベトナム料理らしい
伊藤忍(ベトナム料理研究家) 2000 年より約 4 年間のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のメニュー開発、執筆を中心に活動。2011 年7 月に新作『ベトナム×ハノイ36 通りグルメ』(情報センター出版局)を出版。詳しくはホームページ(www.vietnamfoodnet.com)を。
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