ベトナムの今がよくわかる／ベトナムニュース解説 1月号

年末家電商戦に押し寄せるタイ洪水の余波

タイで発生した洪水により、一部製品のベトナムへの輸入が途絶えている。家電販売店によると、2011年11月に最も大きな影響があったのは、年末に販売が伸びる洗濯機と冷蔵庫だった。すでに10％程度値上がりしている商品もあるが、品不足が年末の仕入れシーズンに重なったことで、便乗値上げが起きる可能性もある。『Sai Gon Tiep Thi』 2011年11月28日p.12

解説
タイの大洪水で現地の日系企業の工場なども多数被害が出ていますが、ベトナムの日系工場でも、部品調達の影響による減産や、その生産停止分をカバーする増産などの対応に追われたようです。一般には、直接的な影響は特に見られませんが、ベトナムではタイをはじめとする東南アジア諸国からの家電製品の輸入も多く、また通常は旧正月テト（Tet）を控えた年末に家電販売が大きく伸びるため、品不足や値上がりなど、影響を危惧する声が上がっています。一方ベトナムでも洪水は、全国的に毎年のように発生しています。中部では９月頃からの台風シーズンに発生し、ハノイやホーチミン市でも、大雨や潮汐の影響で頻繁に起こります。大都市で排水能力強化事業が行われているほか、大規模な堤防建設など対策案も様々あるようですが、他人事ではないタイ大洪水の教訓をどう活かしていくかが、ベトナムの都市開発の課題ともなっています。

テトのバス運賃、最大60％値上げ

地方省を結ぶ中・長距離路線が発着するホーチミン市のミエンドン（Mien Dong）バスターミナルでは、2011年12月25日（日）から2012年1月18日（水）まで、テト期間のチケット販売を行う。テトのバス料金は20～60％引上げられる見通しで、各社がそれぞれ決めるが、値上げ分は通常料金の60％を超えてはならない。同バスターミナルによると、このテトの往来は去年より5％程度増加する可能性がある。『Tuoi Tre』2011年11月29日p.2

解説
ベトナムでは旧正月テトを盛大に祝い、多くの人が田舎に帰るため大規模な帰省ラッシュが起きます。大まかには、テト前には南部から北部へ、テト後には北部から南部へという人の流れになりますが、この時期の交通は例年、飛行機も鉄道もバスも、チケットは販売開始直後にほぼ売り切れ状態となります。そのためヤミで高額で購入せざるを得なかったり、鉄道やバスでは定員オーバーの超満員状態で運行したりということが当たり前になっており、そんな劣悪な交通に嫌気を感じる人には、中部－南部程度ならバイクで、という人もいるようです。このような交通事情もあってか、テト明けに帰省先からのUターンが遅れる人も多々あり、工場では生産に滞りが生じることも多いため、帰省の送迎バスを会社で用意する例も増えているようです。

賃金改正、一律引上げで監視強化

これまで賃金改正の際には、最低賃金を下回る労働者の給与だけ調整されることが多かった。この状況から今回、労働管理機関は監視を強化し、従業員の給料を一律に引上げない企業には罰則を講じる構えだ。 2011年10月1日（土）から、企業に適用される最低賃金は第1地域（ホーチミン市・ハノイなど）が200万VND（約7520円）、第2地域（フエ、ダナン、ニャチャンなど）が178万VND（約6690円）、第3地域（第2地域に含まれない省直轄市など）が155万VND（約5830円）、第4地域（その他）が140万VND（約5260円）となっている。『Thoi Bao Kinh Te Sai Gon』2011年11月3日p.7

解説
ベトナムの最低賃金は、大きく民間企業労働者と公務員とで分かれ、企業労働者は毎年１月１日、公務員は５月１日に改正されています。ですが、高い物価上昇率から、最低賃金の早期改正を求める声が相次いだため、企業労働者の最低賃金改正は、例年なら2012年1月1日（日）のところ、前倒しで2011年10月1日（土）となりました。引上げ率は前回の10～38％に対し、今回は27～69％と大幅増額となり、この金額が2012年12月31日（月）まで適用されることになっています。また今回、ベトナム政府は、地場企業と外資企業とで分かれていた企業労働者の最低賃金の一本化も行っています。