ヴィジュアル☆ベトナム/APPRECIATING BEAUTY/美しさを愛でる

APPRECIATING BEAUTY/美しさを愛でる ヴィジュアル☆ベトナム先月、ウェブサイトを更新した際に、「美しさ」をテーマに私が宮城県南三陸町で企画した女性のワークショップを見返してみた。南三陸町が津波で悲劇的に流されてしまう5ヶ月前の2010年に行ったワークショップ「私の美しき南三陸」。都市環境において女性同士のつながりを高め、生活や仕事の場で体験できる視覚的な喜びの瞬間を増やす基盤を創るのが目的だった。 何を美しいとするかは、もちろん難しい問題だ。哲学者イマヌエル・カントが論じたように、美はいわゆる対象の性質ではなく、私たちの意識と自由な想像が思考の対象にもたらすものだ。美しさとは主観的な体験だ。当然ながら、ワークショップの参加者たちが南三陸の美しさとして選んだものは実に様々だった。それまではその美しさ自体や、美しいものが彼女たちの生活にいかに良い効果をもたらしてくれるかには、気づいていなかったけれど。 美しいものを美しいと思えるなら、退屈な日々の用事や葛藤の中にあっても、視覚がもたらす数多くの至福に近づけるようになる。世界のどんな場所にいてもそうだ。サイゴンをバイクで走り回っていると、毎回目にする多くの醜いものの中に、強い喜びを与えてくれる美の端々にしばしば出会う。なにげない路地の形と質感の素晴らしい組み合わせや、この世のものとは思えない様子で輝く壁に差した光、家のペンキ塗りをした時に誰かが頭をひねって作りだした色やバルコニーのオアシスなどが目に止まる。美とその価値に対して繊細でいれば、それらはすべてここにある。 審美的な喜びは定量的ではなく、簡単に表現できるものでもないが、間違いなく感じられるものだ。さらに、この体験は生活を豊かにしてくれる。美の必要性とは、それ以上の何物でもない。
Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学・日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 www.suehajdu.com http://www.facebook.com/Sue.Hajdu.Projects
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