伊藤忍のベトナムめし大全/第44回 くずれ米ごはん/Cơm Tấm

くずれ米ごはん/Cơm Tấm 伊藤忍のベトナムめし大全ベトナム人の食習慣では、主食である白いごはんを中心とした食事は主に昼や夜にとり、朝ごはんには麺や米生地類、餅、お粥、おこわ、パンなどの軽食を食べます。つまり、基本的には朝食に白いごはんを食べないのです。しかし、白いごはんでありながら、朝食にも食べられているものがあります。それが今回ご紹介する「コムタム/Com Tam」(Com=ごはん、Tam=破片、小さく細かい物)です。 コムタムとは、通常の3~4分の1程度のサイズに割れた米「ガオタム/Gao Tam」(Gao=米)を炊いたごはん。ガオタムは元々、精米の際に崩れて周りに飛び散った米の欠片で、昔は鶏の餌にしたり、経済的に苦しい時をしのぐ際にお粥などにして食べていたものでした。しかし、このガオタムを炊いたコムタムは、普通のごはんと比べ軽くて食べやすいので、わざわざこれを食べさせる商売がホーチミン市で生まれ、南部地方全体で食べられるポピュラーなものとなりました。 現在ではガオタムは普通のお米よりも値段が高いくらい人気があり、主に朝食として食べられますが、中には昼や夜に出す店も見られるようになりました。 コムタムは、いくつかの決まったおかずと一緒に食べます。代表的なのが、甘じょっぱいタレに浸けてから炭火でこんがりと焼いた骨付きの豚のリブロース「スーンヌン/Suon Nuong」(Suon=リブ肉、Nuong=焼く)。他にも、ゆでた豚皮を細切りにし、調味料と炒り米粉をまぶした「ビー/Bi」、ひき肉やきくらげ、春雨などを具材に入れた蒸し卵の「チャーチュン/Cha Trung」(Cha=肉や魚介を細かくして固めて加工した物、Trung=卵)、皮なしのトマトソース味のシューマイ「シゥマイ/Xiu Mai」、などが主菜となります。 これに「チュンオプラ/Trung Op La」(Trung=卵、Trung Op Laで目玉焼きを指す)や漬け物、なますなどを好みで添えます。さらに、ごはんやおかずの上に、ねぎ油の「モーハン/Mo Hanh」(Mo=脂〔最近では油も使うが昔は豚の脂から作った〕、Hanh=ねぎ)をかけ、食べる際に魚醤ヌックマムの甘酸っぱいタレをかけて、スプーンとフォークを使って全体を混ぜ合わせて食べます。 最近では、店によっておかずのバリエーションも増え、現代的なチェーン店なども増えています。また人気のコムタム店では、店頭で朝から豚のリブロースを炭火で焼きながら客引きをしていたりします。「えっ朝からガッツリと骨付き肉?」なんて思っていても、この軽いコムタムだとペロリと食べられてしまうから不思議です。 (写真上)おかずは1種類だけでなく、味や食感、ボリュームなどによって複数を注文して、皿に盛り合わせてマイプレートを作ってもらう

奥が普通のごはんで手前がコムタム

奥が普通のごはんで手前がコムタム。粒が小さいので粘り気を感じず、スルスルと入っていく
伊藤忍(ベトナム料理研究家) 2000年より約 4 年間のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のメニュー開発、執筆を中心に活動。2011年7月に新作『ベトナム×ハノイ36通りグルメ』(情報センター出版局)を出版。詳しくはホームページ(www.vietnamfoodnet.com)を。
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