第3回 自然な旨味と食感の／マリアージュを楽しむブンリウ

白が基調の内装、高い天井、掃除の行き届いた床、可愛らしい黄緑のテーブルなど、「ウィー」はまさにオシャレベトナミーズカフェ。通を気取ったオヤジ向けではないのは重々承知だが、たまには小綺麗な店で優雅にランチを楽しみたい時もあるのだ。しかも上限５万VND（約190円）で。 サッと渡されるメニューは高価な品ばかりなので目もくれない。狙うは、その日の日替わりランチのみ。何といってもおすすめは麺類だ。 本日木曜は「ブンリウオック」。厚揚げ、カニ肉のミンチ、トマトなどに加えて、豚の血豆腐やタニシなどの個性的な具材がたっぷり。ほんのりした甘みのある豚骨ベースのスープは、間違いなく無化調のそれだ。通は、出される料理が無化調という事実そのものに実に弱い。気がつくと、うなずきながらにやけている自分がいる。 じんわりとした優しい深みのあるスープに加えてちょっとしたアクセントになるトマトの酸味を楽しみながら、血豆腐独特の柔らかいのにソリッドな食感や鉄分の風味、タニシのコリッとした食感を満喫する。 これにハーブや生野菜、特にバナナの茎や花、空心菜の茎、もやし等の食感の対比も面白い。付け合わせのマムトム（エビの発酵調味料）をスープに溶かし入れると、凝縮した甲殻類の旨味を柔らかな豚骨スープのコクが包み込み、旨味のマリアージュが楽しめるのだ。こちら、決して侮れない実力派オシャレカフェなのである。

本日のひとり飯： WE Restaurant & Lounge 8 Le Quy Don St., Dist. 3

• 「日替わりメニュー／Of the Day」３万9000VND（約150円）。毎週木曜は「ブンリウオック／Bun Rieu Oc」

井之原 四郎 孤高のフーディーを自称するフードライター。食べ物である限り、食べられない物がないのが自慢。美味い料理を食べているときは自分だけの世界に入り込んでしまい、時には涙を流すことも。酒にも目がない。