伊藤忍のベトナムめし大全/第35回 鶏おこわ/Xôi Gà

鶏おこわ/Xôi Gà 北部のある店の鶏おこわは、軽く爽やかな印象

伊藤忍のベトめし大全日本で「おこわ」と言うと、何だかとても胃に重たい印象があって、それほど頻繁に食べていなかったのですが、ベトナムのおこわを食べてそのイメージはガラリと変わりました。ベトナムのもち米はインディカ種なので、日本のものよりかなり軽め。ちょうど日本のうるち米ぐらいの粘り気です。食べた後、日本のものほどには重たくないので、私もベトナム人と同様に、朝ごはんや小腹がすいた時に、気軽におこわを食べています。 数あるおこわの中でも代表的なものが、「ソイガ―/Xoi Ga」(Xoi=おこわ、Ga=鶏)です。鶏のゆで汁をもち米に吸わせて炊き上げたおこわの上に、切ったり裂いたりしたゆで鶏をのせて食べる料理です。こう説明するととてもシンプルですが、地方や店によって、仕上げや作り方に違いがあって、食べた印象も全く異なります。 私が一番好きなのは、ハノイでよく見かける刻んだレモンの葉を添えた鶏おこわです。鶏スープで炊いたおこわに柔らかな鶏肉をのせ、綺麗に細く刻んだベトナムのレモンの葉「ラーチャイン/La Chanh」(La=葉、Chanh=レモン)を上から散らします。ベトナムの大豆醤油「シーザウ/Xi Dau」(北部や中部での呼称)や、それをベースにしたタレをかけ、北部風のあっさり味の青パパイヤのなますを添えます。おこわはあっさり味ですが、しっかりと鶏の旨味が効いていて、時々鼻をくすぐるレモンの香りや、歯ごたえのある青パパイヤの食感がアクセントになって、あっと言う間にひと皿食べてしまいます。 ホーチミン市には、これと全く反対でコクもボリュームもたっぷりの鶏おこわがあります。南部では、鶏をゆでる際によく、水といっしょにココナッツジュースを加えます。ココナッツジュースの自然な甘みがコクとなって、鶏のゆで汁に甘味や旨味の奥行きが加わるのです。そのゆで汁でもち米を炊く際、さらにココナッツミルクを振りかけたりもします。ココナッツミルクの香りが広がり、さらには油気も加わります。ゆで鶏は北部同様で切ったり裂いたりするだけですが、仕上げにねぎ油をかけたり、揚げねぎを散らしたりして油気をしっかりとプラスします。また、鶏を一度揚げてからココナッツジュースやベトナム醤油、砂糖で甘辛くしたタレに入れて煮たものをのせる、ガッツリ食べられそうなものもあります。 もちろん店によって、多少仕上がりは異なってきます。おこわはテイクアウトも気軽にできるので、いろいろと食べ比べて見るのも面白いでしょう。 鶏おこわ/Xôi Gà ボリューム満点の「ソイ ガー ロティ / Xoi Ga Roti」(Roti=フランス語で焼くの意。味付けして丸ごと回転焼きにするロティサリーチキンを真似て作った、ベトナム風の味付け揚げ焼き料理)
伊藤忍(ベトナム料理研究家) 2000年より約 4 年間のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のメニュー開発、執筆を中心に活動。2011年7月に新作『ベトナム×ハノイ36通りグルメ』(情報センター出版局)を出版。詳しくはホームページ(www.vietnamfoodnet.com)を。
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