第68回 尿意は我慢しないことが大切

メディカルトーク症例 ベトナム駐在の50代日本人男性が、頻尿を訴えて来院。前立腺癌も疑われたが、良性前立腺肥大症と診断され、投薬治療で症状を抑えた。

今回のドクター Dr. レー・シー・チュン(Le Si Trung)泌尿器科医/ハノイフレンチホスピタル

①良性前立腺肥大症とは? 前立腺とは男性にしかない生殖器で、精液の一部となる前立腺液を作ります。この前立腺が加齢とともにホルモンの影響で大きく腫れるのが「良性前立腺肥大症」です。50歳以上の男性に多く、糖尿病や高血圧、遺伝子的要因もあると考えられています。 排尿困難や排尿力の低下、尿失禁、頻尿(昼間であれば2、3時間に1回、夜間であれば2回以上が目安)、下腹部の違和感、といった症状があれば、良性前立腺肥大が疑われます。長く放置すると、腎臓や膀胱などにも影響が出る可能性も。前述したような兆候があれば、早めに泌尿器科の受診を受けるようにしましょう。 ②治療法は? 治療前には血液検査で、前立腺癌の疑いがないかを調べます。腫れが小さければ、抗生物質や前立腺の緊張を減少させる薬などで症状を和らげます。 投薬の効果が見られない場合は、手術しなければなりません。腫れがよほど大きくない限り開腹手術はせず、身体に負担が少なく合併症のリスクも小さい内視鏡手術が一般的です。 内視鏡手術は、腰椎(ようつい)麻酔とよばれる下半身のみの麻酔で行います。前立腺肥大により、膀胱の手前辺りから尿道が細くなっているため、尿道を圧迫している部分を電気メスで削り取り、止血します。手術時間は約1時間、入院は3~5日間ほどです。 ③予防法は? 前立腺肥大症の最大の危険因子は加齢です。これを防ぐのは難しいですが、身につけたほうがよい生活習慣は、排尿を我慢しないこと、適度な運動を心がけること、アルコールを控えめにすること。ベトナムは街中でトイレを見つけにくいですが、排尿が可能な時にできるだけ済ませましょう。50歳以上の方は、定期健診で前立腺の超音波検査を行うことも必要です。
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