2011.08.02

今月のテーマ/ベトナム会計基準 外貨換算基準

Q ベトナムドン(VND)に基づく記帳を行っています。外貨建て預金や債権・債務のベトナムドンへの換算、財務諸表への表示に関する注意事項などを教えてください。 A ベトナムでは、原則としてベトナムドンが記帳における基準通貨となります。従って、外貨建項目は、ベトナムドンに換算してから記帳しなければなりません。また、決済や決算時において為替差 損益が発生しますが、損益計算書に計上しないケースもありますのでご注意下さい。

①外貨建取引

「外貨建取引」とは、契約価額が外貨で表示される取引(購入、販売、借入、貸付など)を指します。 ベトナムでは、原則としてベトナムドンが記帳における基準通貨となりますので、円建てや米ドル建て契約は、ベトナムドンに換算して記帳します。

②取引発生時の換算

取引発生時の記帳は、原則として取引日の為替レートによるベトナムドンへの換算額にて行います。 取引日の為替レートではなく、一定期間の為替レートの平均値を用いて、その期間に発生した取引の換算を行うことも可能ですが、為替レートが著しく変動する環境下では認められませんので、注意が必要です。

③貸借対照表項目の決算時換算

決算時に資産または負債として貸借対照表に計上される外貨建項目は、その内容に応じて決算日の為替レート(インターバンク市場での取引レート)での換算が必要となります。 決算日の為替レートによる換算が必要な項目は、「貨幣性項目」とよばれています。貨幣性項目とは、通貨および売掛金・買掛金のように、定まった通貨額で決済される債権・債務を指します。貨幣性項目以外の非貨幣性項目は、取引発生時の為替レートでの換算のままとします。

④換算差額の財務諸表への開示

当年度決算時の為替レートが過年度決算時、または期中取得時の貨幣性項目の為替レートと異なる場合、当年度決算時の換算にて為替換算差額が発生します。 決算時に発生する為替換算差額は、その後の決済時までは確定しない差額ですので、「未実現為替差損益」とよばれます。未実現為替差損益は、貸借対照表上の「為替換算調整勘定」に計上し、差損と差益を相殺した後の差額を、損益計算書上の財務収益または財務費用に計上します。

⑤事業開始前の特例

法人設立後から事業開始までの間に発生した為替差損益は、事業開始までは損益計算書には計上しません。従って、その間に発生した為替差損益は、貸借対照表上の為替換算調整勘定に計上します。 事業開始までに取得した資産が実際の事業に使用されてから初めて、為替換算調整勘定を償却していきます。償却額は損益計算書の財務収益または財務費用として計上し、償却期間は最大で5年間です。
今月のまとめ ①外貨建取引:契約価額が外貨で表示される取引 ②取引発生時の換算:原則として取引日の為替レートで換算 ③貸借対照表項目の決算時換算:貨幣性項目は換算が必要 ④換算差額の財務諸表への開示:貸借対照表および損益計算書に開示 ⑤事業開始前の特例:貸借対照表のみに開示 安藤 崇NAC (Vietnam) Co., Ltd. 南山大学法学部卒業。会計事務所、メーカー管理部門責任者などを経て、NAC ベトナム創設に参画(NACは香港、中国、台湾、シンガポール等を拠点とする日系国際会計事務所)。ベトナム在住9年で、現地の会計実務・ビジネス慣習・ベトナム語に精通。 http://vn.nacglobal.net