2011.08.02

第2回 輝いていたベトナム株。でも、もしかして…

初めてハノイに来た2007年7月、当時のベトナムには大小あわせて100社近い証券会社が乱立しているといわれていました。その中で、1番大きな証券会社のハノイ支店を訪ねました。そこで、日本語を話す顧客担当者Dさんに、ベトナム株の状況を教えてもらいました。 ベトナムの株式市場には、大きめの企業が上場しているホーチミン市場と、比較的新しい企業が上場しているハノイ市場の2つがあります。ホーチミン市場では、東京市場での日経平均株価に相当するVN指数(※)が設定されています。 VN指数は、ホーチミン市場が開設された2000年7月に100ポイントを基準にスタートしました。2006年初め、300ポイントあったその数値は、その後1年半で3倍強の1000ポイントを超える急騰を見せていました。 ベトナムのWTO(世界貿易機構)加盟が視野に入ったことを受け、海外の投資家から注目されたことが上昇の大きな要因でした。WTO加盟により農産物や製品を海外で売りやすくなると、ベトナムの経済成長が促進されます。そのため、まだ小さかった当時の株式市場は、過熱気味に盛り上がったのです。 Dさんはこう言いました。 「3月に1100ポイントを付け、現在はそこから少し安くなっています。今がチャンスです」。 これは当時の一般的な見方でした。株は将来を見越して取引されます。ベトナムの発展が間違いないと投資家が考えれば、いくらその数字が高くても、高過ぎるとはみなされません。しかし、日本の新興市場で痛い目にあったことのある私はこう考えました。「既に、バブルは弾けたんじゃないか?」と。 ベトナム株は1年数ヶ月で、指数が3倍になるまで上昇を続けたわけです。個別でなら10倍、20倍になった銘柄もあるはず。もし日本で、日経平均が3倍になったらどれだけの騒ぎになるか。それが天井を打ったなら、リスクが大きいと考えるのが賢明です。 結局、2007年は書類だけをもらい、手続きはしませんでした。
脇田敦(わきたあつし)今月の一喜一憂 インフレの影響で株式市場もさっぱり閑散ですね。そうなると証券会社の株価はどんどん下がります。当然ですよね?投資家が株を売買することで証券会社の収益はあがるわけで すから。でも、そういう時こそ個人投資家にはチャンスかもしれません。株は安い時に買い、高い時に売るものだからです。 ベトナム政府は現在、一生懸命インフレ退治をしています。 成果は徐々に現れると私は予測しています。インフレが収まれば金利が下がり、株式市場にも資金が戻って来るはず。そうなれば、見向きもされなかった証券株の出番かもしれません。株がダメな今こそ、私は証券株に注目しているのです。
※VN指数:ベトナムの株価を数値化したもの。ベトナム株式市場全体の値動きを示す指標となる。
脇田敦(わきたあつし) 1969年、京都府生まれ。ラジオNIKKEIのディレクターとして株番組を担当していた時にベトナム株と出会い、2008年にハノイへ移住。ライター業のかたわら、ベトナム株を取り引き。著書に『日本サッカー狂会』(国書刊行会)やジャニーズ関連の電子ブックなど。 ブログ→『ハノイの日本人』(http://d.hatena.ne.jp/wakita-A