2011.07.31

第19回労働許可証の取得に関して

Biz Vietnam ベトナムで長期的に就労する外国人は、労働許可証の取得が義務付けられています。取得しないとビザの発給が困難になるほか、厳しい処分を受ける恐れもあると、第10回で書きました。今回はその補足として実務上の細かな注意事項や、最近の動向について解説します。
  1. 出張者の労働許可証は? 2008年に公布された政令34号に基づき、3ヶ月以上ベトナムで就労する外国人は、労働許可証を取得する必要があります。しかし、長期出張の形態で働く外国人はどうなるのでしょうか。労働許可証は、現地法人や駐在員事務所に所属する外国人を対象としており、出張者については対象外です。現時点では労働許可証がない者の場合、申請できるビザの期間は最長で3ヶ月となっています。ですから、出張者はビザの更新をその度に行う必要があります。 ビザの更新にあたっては当局から、出国を条件とされる事例も多くなっています。
  2. 無犯罪証明書の取得について 労働許可証の申請にあたって、ベトナム国外での入手が必要な資料のひとつとして、「無犯罪証明書」があります。日本での正式な名称は、「犯罪経歴証明書」です。「人を見たら泥棒と思え」的な意思が含まれているようで、快い名称ではないかもしれません。 日本での発給機関は、申請者が申請時点で住民登録している都道府県の警察になります。申請については、必ず本人が来ることが求められますので、赴任前に取得することをおすすめします。そこでの取得が無理な場合は、在ベトナム日本国大使館、在ホーチミン日本国総領事館でも申請が可能です。ただし、取得までに1ヶ月以上かかります。 なお、申請前に6ヶ月以上ベトナムに滞在している場合は、ベトナムで無犯罪証明書を取得することになります。申請先は、法人や駐在員事務所が登録されている地域ではなく、申請者本人の住居のある市や省の司法局となります。 また、申請直前に3ヶ月ビザを連続的に、あるいは6ヶ月以上のビザを取得している場合、実際のベトナムにおける滞在期間が6ヶ月に満たなくても、既に6ヶ月以上当地に居住していると見なされることがあります。そうなると、日本ではなく、ベトナムでの無犯罪証明書を要求されます。どちらが必要になるかは、労働許可証の申請先機関に問い合わせる必要があります。
  3. 今後の取り締まりの強化 外国人の就労を管理する政令34号については、2010年、2011年1月と、既に2回改正案が発表されています。内容的には、今後管理が強化され、労働許可証の取得に関するハードルも高くなる見通しです。 ベトナムでは2年ほど前まで、労働許可証がなくても外国人のビザ延長は容易にできました。それが突然厳格化された背景には、ベトナム政府が外国人単純労働者の滞在長期化を警戒したためといわれています。今後は流入そのものを、「水際」で阻止しようと考えているのかもしれません。 現在の規定では、4年制大学卒業以上の学歴を有する外国人の申請者に対し、業務に関する5年間の経験を証明する資料の提出は要求されていません。しかしながら、実際に提出を求められた事例も出てきています。 なお、2011年1月の政令34号の改正草案には、下記のような罰則の強化が盛り込まれています。
    1. 施行された6ヶ月後に労働許可証を取得していない者に対して、労働局は公安に対して強制退去を提議する。
    2. 労働許可証を取得していない、あるいはその更新をせずにベトナムで3ヶ月以上就労する外国人にはビザを発給しない。
    3. 労働許可証を取得しない、または取得できない外国人は、公安が国外へ強制退去させる。
  4. 今後の動向について この政令改正案の公布と施行は、近いうちに実施されると予測されているので、十分な注意が必要です。 ベトナム政府は2011年、2012年と、労働法に関連する行政手続きの廃止・簡略化の計画案を作成し、実施を進めています。しかし、労働許可書の取得手続きを、廃止・簡略化する内容は見当たりません。 外国人の就労を厳格に管理しようというベトナム政府の方針は、不動といえそうです。
斉藤雄久(さいとう・たかひさ) AIC VIETNAM CO.,LTD. 1962年東京都葛飾区出身、1985年早稲田大学社会科学部卒業。1994年12月より在ベトナム。日系工業団地勤務、日越合弁企業のホーチミン市支店長、日系コンサルティング会社代表などを経て、2008年「AIC VIETNAM CO.,LTD.」の設立に参画。趣味はクラシックやジャズなどの音楽鑑賞。