<北部民族歌謡大全>
クアンホ (Quan Ho)
ベトナム北部の小さな村から始まった習慣が、今では全国各地に知られる伝統民謡となったクアンホ。現在は、旧暦の1月13日にリム村で催される「リム祭り」の他、ハノイ市内の文廟で随時上演されている
ロマンス溢れる
男組×女組のかけあい合唱
男性4〜6名、女性4〜6名ほどのグループの中から、それぞれ1人または2人ずつ交互にメロディに乗せた詩を歌い合うクアンホ。男性の中で歌の上手な2人はアインハイ(Anh Hai/長男)と呼ばれ、女性の場合はチハイ(Chi Hai/長女)、その後順にアインバー(Anh Ba/次男)、チバー(Chi Ba/次女)…と続いていく。アインハイが歌えばチハイが歌うというように交互に歌うのが特徴で、詩の内容は男女の情愛に関するものがほとんど。日本のソーラン節を思わせる、ゆったりした伝統民謡だ。
このクアンホは11世紀の李(リ)朝時代、大木を切り倒し運んでくるように王から命じられたバクニン(Bac Ninh)省にあるリム(Lim)村の人々を、タムソン(Tam Son)村の人々が助けたことから交流が生まれ、兄弟の契りを交わす儀式として始まったと言われている。リム村からは女性、タムソン村からは男性(逆もある)が出て歌うが、結婚式や記念日などでは、同じ村人同士で歌い合うことも。また、歌い合った人々は義兄弟の契りを交わしたとして結婚を固く禁じられるため、惹かれ合う2人がいても結婚できない。ゆえにクアンホの歌声は、悲しく美しくなるという。
ベトナム人だけでなく、日本人の琴線にもどこか触れるクアンホ。その切ない歌声を、1度体験してほしい。 |