サイゴン発ハノイ行き。
1726kmの旅の始まり。
駅はいつも旅情に溢れている
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1976年に街の名前はホーチミン市へ変わったが、駅は今も「サイゴン」のまま |
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「ハノイ行き、S6列車は1番ホームから出発します。」
柱に備え付けられた旧式のスピーカーから、ノイズ混じりのアナウンスが響き渡る。それを合図に爽やかなブルーのシャツをまとった女性が、鍵のかけられた扉をけだるそうに開けた。抱えきれないほどの大きな荷物を持った男性が、薄っぺらいプラスティックのイスから腰をあげる。その横では小さなリュックを背負った女の子が、扉の向こうに敷かれた赤さびたレールの先を覗きこんでいた。
ここは、ベトナム統一鉄道最南端の駅「サイゴン(Sai Gon)」。ニャチャン(Nha Trang)、ダナン(Da Nang)、フエ(Hue)を駆け抜け、ハノイ(Ha Noi)へ向かう旅の始発駅だ。南国の太陽とは対照的に、薄暗い駅舎の待合室は、旅行者や見送りの人でごった返し、ざわめく会話と人いきれが渦巻いていた。
サイゴン駅からハノイ駅までの全線を走る列車は、SE1からS8までの12本。大きくわけてSE、E、Sの3車種があり、便名につく数字はハノイ発が奇数、サイゴン発が偶数番となっている。外国人旅行者がもっぱら利用するのはSE、Eの上級車種で、ソフトシートやソフトベッドなど、快適な旅の設備が整ったもの。そんな中、私は緑の車体に黄色いラインが引かれた、鈍行列車S6号に乗り込んだ。
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