03 The Museum of Ho Chi Minh
ホーチミン記念館
建設年：1863年　建築様式：ベランダ様式　建築家：不明

幾重のアーチが描く
開港初期のアジアがここに

	↑アーチ以外にも、ボールド（半円筒形）状の2階天井など、大胆な中にも繊細なアレンジが施されている

　ベンゲー運河を渡ると左手に見えるピンク色の建物。かつては貿易会社の社屋であり、フランスの貨物船で働いていた若き日のホーチミンがここからベトナムを離れたと言われる、それがこのホーチミン記念館だ。

　屋根に月へと向かう二匹の龍がいることからNha Rong (House of Dragon)の愛称で有名なこの建物だが、特筆すべきは実は周囲のベランダ。建物の外側に吹き出しを持ち、内側に窓付きの壁面があるこの構造は「べランダ建築」と呼ばれている。建物を二重にすることによりベランダで日差しを遮断、更に風通しもよくなるという一石二鳥の建築方法で、熱帯にやってきた西洋人が少しでも涼しく暮らす為に考え出されたもの。

　だが、本来のベランダ建築としては、大胆にはみ出したベランダなどあまりに不完全で珍しい。アジア各地へ西欧列強が進出してきたまさに初期の姿を留める貴重なものといえるのだ。

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