マムとの再会
クメール料理の存在はとても地味。メニューにあるのはタイ、ベトナム、中国料理ぽいものばかりで、味もそこそこ。でも、クメール人はこんなものばかり食べてるわけではないだろうと、市場で見かけたマムを使った家庭料理を作ってもらった。「外国人向けの味にしないで」との注文もつけた。そして出されたのが、ほのかに梅のような酸味がする冬瓜や魚の干物の入った澄んだスープ。同じマム料理でもチャウドックで食べたラウマムとは似ても似つかぬ味。ベトナム式にご飯にぶっかけたらそれこそ「梅サケ茶漬け」ではないか。こんなおいしいものがどうしてメニューの載らないのか。隠さずに外国人にも食べさせて欲しい味だった。
クメール織りに捧げる
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|年月を重ね、熟練した者のみが持つ手。そのしなやかな指先がクメール絣の命ともいえる柄をひとつひとつ生み出していく。取材協力:クメール伝統織物研究所(No.472 Road to lake, P.O.Box 9349, Siem Reap) |
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その後、伝統的なクメールシルクをよみがえらそうとしている森本喜久男さんの工房を訪ねた。内戦のため途絶えようとしていたその技を後世に伝え、更に品質やデザインの向上に努めている。軽く話を聞くつもりだった私は、ぐいぐいと彼の話に引き込まれていた。機械織りが主流となっている世界のシルク市場。でも、森本さんが追い求めているのは手作りの本物。この地にすでに10年、でもそれは最初のステップでしかないという。300人のスタッフに囲まれ彼の夢はその先へ進んでゆく。
旅の終わり
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|左上がチャウドックで食べたフーティウ、左下がシェムリアップのクイティウ |
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この旅の終着点はもちろんアンコールワット。雨期ゆえ日の出は拝めなかったが、そのすばらしさは堪能させてもらった。アンコール参りが終わってありついた朝食は、クイティウ。ベトナムでいうフーティウである。ややコシのある米の麺に甘いスープがメコンらしい味だった。それがフーティウというものと思っていたが、"本場"の味はちょっと違った。塩味ベースのスープに「こっちの方が日本人好み」と舌鼓を打つ。フーティウに始まり、クイティウに終わった旅。タイまで行けば、さらに何かがつながるのでは、という思いを持ちながらも、私は旅を終えた。
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