テトを支える立役者。
正月は、これがないと始まらない。
「テト」と呼ばれるベトナムのお正月。ハノイではこの時期、家の軒先に「金柑」と「桃の花」が日本の門松のように飾られる。その赤や黄の色彩は、まさに新年の幕開けを祝福するかのように華やか。そこで、テトに決して欠かせないこれらの木々を毎年大切に育て続けている、2軒の農家を訪ねてみた。
金柑が何を求めているか、
耳を傾けてあげることが大切なんだ。
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写真上)金柑職人のタインさんは、1960年生まれの45歳。15歳の時から、父の手伝いをしながら金柑の育て方を学んできた |
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金柑はハノイ市の中心部から車で約10分と程近い、クアンバー(Quang Ba)村で主に栽培されている。そして、金柑農家を営むタイン(Thanh)さんの家も、その村の中、タイホー(Tay Ho)寺に向かう道の途中にあった。
タインさんは金柑農家が集まるこの村でも、特に良い金柑を育てる職人として、誰もが一目置く有名人。正月もまだ遠い時期から事前に予約を入れようと、彼の金柑を求めて人が訪ねて来ることもよくあるという。確かに彼の金柑は他のどの畑のものよりも実が大きく、葉の色艶や形も良い。しかし、金柑農家の2代目である彼が、父親から教わったのは基本的な育て方のみ。つまり、タインさんの努力と苦労、そして研究の結果、たった一代でどこにも負けないすばらしい金柑が作れるようになったのだという。
「美しい金柑を作るには、新しい栽培技術を取り入れるのも重要だけど、まず金柑が何を欲しているのか、それをとことん考え、その気持ちに合わせて育ててあげることが大事なんだ。一番大変な作業は木を仕入れ、畑に植える時。根に気は使うし、とにかく重労働。でもそれが終われば、あとは毎日畑を見てまわって形を整え、選定し、金柑の声を聞いてあげるだけ。」と、いとも簡単に彼は言う。
「もちろん一番嬉しいのは、自分の金柑が売れた時さ。お正月、友達の家に自分が大切に育て上げた金柑が飾ってあった時も、本当に嬉しいね」。
しかし、そんな金柑畑も息子が継がないことが決まり、彼の代で終わりになるという。だが彼に言わせれば「それはそれで仕方がないこと」らしい。
何においても全てを受け入れ考える。そんな気の張らない彼の元で、自由にのびのび成長した金柑たちは、オレンジ色の美しい果実を目いっぱいに輝かせていた。
<タインさんの農園>
住所: Thanh Thuy Kumquats Garden, Dang Thai Mai St., Tay Ho Dist.
電話: (04) 7182563
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(2005年2月16日 水曜日 14:50更新) |