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この店に初めて来店した時の出来事。店主がメニューを渡すなり、私の顔を見て「見たことある!」と握手を求められた。それがこの店の店主タン(Thang)さん。私の著書に載っていた小さな写真で顔を覚えてくれていたのだ。そんな彼に私は、客の事をよく観察しているなと、いきなり関心させられてしまった。 「今までの僕の人生で運命的な出来事が2つありました。1つ目は妻との出会いです」とタンさんは話してくれた。 彼は大学院を卒業した後、貿易関係の仕事に就いていたが、たまたま観光でベトナムを訪れていた松本佐代さんと出会った。そしてその後2人は結婚、しばらくして彼は日本に住むこととなった。 いくつかの仕事を転々としながら2年近く経ったある日、2つめの「運命の出来事」が起きた。たまたま訪れた知り合いの店が、居抜きで引き継いでくれる人を探していたのだ。そこで彼は考えた末、その場所で『タン・カフェ』をオープンする事に決めたという。 カウンターとテーブル席が1つだけの小さな店。「失敗したらベトナムに帰ろう。これが日本での最後のチャンス」と心に決め、がんばった。しかし外国人である彼が日本で商売をするのは、そう簡単ではなかった。時には客が1日で1人だけ。出したフォーが手付かずで残っていたり…。 「なぜだろう?」 彼はひたすら試行錯誤を繰り返した。そして辿り着いた答えは、 「お客さんへの明るい挨拶を欠かさない事。そしてその土地に合うように味を調整し、おいしい料理を提供する事です」。 例えばベトナムには「いらっしゃいませ」と挨拶をする習慣がない。また、料理の味は最初は過去に彼が手伝った事のある名古屋のベトナム料理店の味を参考にしていたのだが、名古屋人と関西人は好みの味が違うため、同じ味では対応できなかったのだ。日本人には当たり前の事柄でも、外国人の彼にとっては経験を持って知った大切な事柄。当たり前の事をしっかりとやるだけだが、真剣に客を喜ばせようとする彼の姿勢は、次第に客の心をとらえていった。そして評判が口コミで広まり、今ではより広い場所に移転、スタッフも総勢8名となった。 タンさんには人をなごませるオーラがある。それは培ってきた経験から生み出されたもの。また、佐代さんやスタッフ達も、この居心地の良い空間作りに欠かすことのできない存在だ。私は関東在住のため、かなり距離はあるのだが、彼らに会いにまたふらり、この店を訪れたい。 <RESTAURANT DATA> 【忍さんのひとくちコメント】 文=伊藤忍(ベトナム料理研究家) (2008年3月号/2008年3月27日 木曜日 10:34 JST更新) |
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