ベトナム雑貨よもやま話
成功するかヘッドハンティング(レストラン編)
私は今、社長命令でハノイにレストランを立ち上げている。しかし簡単には行かないのがベトナム。でも失敗する訳には行かない。寄せ集めスタッフで何とか形は作ったものの、正直うまくいってない。悩んだ結果の決断、「よーし最初からやり直そう」。でもどうやってやり直せばいいのか・・・。そうだ、へッドハンティングしてみよう。美味しいレストランの料理人と、サービスに定評あるレストランのマネージャーに仕事を頼めばいいんじゃないか!
決断の日から毎日3軒レストランを回った。外人である特権を利用し、勝手に厨房に入り込んでこそっと裏書名刺を渡してみたり、スパイを使いコンタクトを取ってみたりすると、次第になんだかわくわく映画気分になってきた。こんな事をやっているうちに、意外に早く結果は出てきた。某有名シーフードレストランのスーパーバイザーからコンタクトがあったのだ。ちょうど彼の契約更新時期にあったのも、天からもらったチャンスと思い、話を進めることにした。彼はタイ人。ベトナム在住歴10年で、数軒のレストランの立ち上げに携わってきた。流暢なベトナム語でリッチなベトナム人客を沢山つかんでいる。
それからもうひとつの重要ポイントはシェフ。どのシェフもそれなりに料理はうまいのだが、私がシェフに求めるのはこちらの意見をしっかりと聞き、お客様に合わせた料理が出せるかどうかだ。私達が目指すのは、ベトナム人にも日本人を含めた外国人にも来てもらえる店。それぞれのお客様に満足してもらうには片寄った料理しか出せないシェフでは困るのだ。そんなこんなで最終的に選んだシェフは経験豊富な女性料理人。彼女はサイゴンの老舗レストラン出身で、現在そのハノイ支店を任されている料理長。シーフード料理とフエ料理が得意で、フランス風の味付けも好きなようだ。気に入ったのは盛り付けの丁寧さ。女性らしい繊細さが感じられる。しかし彼女は現在他のレストランで料理長として働いている訳で、その彼女をその気にさせて引き抜くのが私の仕事。勿論給料や良い労働条件のオファーは当然だが、これだけの人間、簡単にハイと言ってくれるとはこちらも思っていない。水面下での交渉が1週間を超えた。
ある朝、交渉を手伝ってくれているベトナム人から、彼女のOKが出たと電話が入った。あ〜あ良かった。やっとトンネルの奥から明かりが見えてきた。ただこれからが本番。メニュー作りからスタッフの再教育、営業活動とやる事は山積み。よく料理はチームワークと言われるが、一人だけ飛びぬけた料理人がいても周りのスタッフが悪ければもともこもない。チームワークがよいレストランの食事はうまい。当然のことだと思うが、時間と根気のいる作業だ。なんやかんやでこのスケッチ7月号が出る頃には開店できると思っているが、初心を忘れず頑張って行きたい。
ハノイの秋は外がとても気持ちいいらしい。その頃までには駐車場の一部を改装して、野外ビアガーデンでもやりたいと思っている。来年はハノイにも日本人旅行者が沢山来て、ホーチミンのように賑わう日を願っている。そしてベトナムに来て楽しい思い出を作り、満足して帰っていただく事が私の願いでもある。よーし頑張ろう。
文=八木 伸樹
(ベトナムスケッチ2003年7月号) |