ベトナム雑貨よもやま話
甘く見ていたレストラン開業
まず始めに、今回は雑貨の話からずれてしまうことをお許しください。というのも実は今、レストランを作っているのです。事の始まりはハノイに土産屋をオープンし、その2階が未使用のままだったので、「もったいないから何かやれ!」と言う社長命令でした。とはいっても、小生レストラン業は未経験。何とかなるだろうという軽い気持ちで始めたのが、今回の苦労話の始まりでした。
ベトナム人従業員を使って仕事をするのは慣れていたつもりでしたが、今回は初めてのハノイ。まずは「ハノイの洗礼」を受けなければなりませんでした。というのは、私達が選んだ料理長はサイゴン人、それに対し残りのスタッフはハノイで現地採用という方法をとったからです。人伝えにこの難しさは聞いていましたが、実際にやってみて再度思い知らされました。
皆悪い人間ではないのですが、やはり心の中に持っているライバル意識は簡単に解決できるものではありませんでした。特に困ったのは、お互い口に出してそれを言わないことです。私が「何か意見があれば気にせず言ってください」と言っても、「コンコサオ(問題ない)」と言うのです。しかしこちらも人間、態度を見ていれば分かります。結局、スタッフをできるだけ若くし、料理長と同年齢の人を別のポジションに変え、何とかまとめたのですが、「なぜレストランをオープンするだけで、こんな事まで気を使わなくてはならないのか」というのが最初の苦労でした。
ようやく多少のまとまりが出てきて、いざ仮オープン。近所のベトナム人を練習を兼ねて招いてみました。ベトナム料理レストランは、ベトナム人にとっては特におもしろいこともないかわりに、問題もないだろうと思っていたのですが、反応はなんと「うまくない」。「どうして? 困った」、でも何とかしなくてはと思い、その「うまくない」理由を聞いてみました。そして分かった大きな事は、同じベトナム人でもハノイ人とサイゴン人とでは、味覚が違うということでした。サイゴンの料理はどちらかというと甘ったるく、薄味なのに対し、ハノイの料理は塩の効いたしっかりとした味で、しかもデリケートな味なのです。
さっそく、料理長と話し合い、何とかベトナム人に食べてもらえる料理が出来たら、次のステップは外国人客。何人かの友人に試食してもらった感想は、これまた「う〜ん、難しい」「何か物足りない」と言うものでした。正直言ってこの壁は高い。簡単には乗り越えられないと焦りました。けれども、ここまで作ったレストラン。ベトナム人のお客様ばかりではおもしろくない。料理長に限界があるようなら、首をすげ替えるくらいの思い切った気合が必要です。「う〜ん、何もかも一筋縄ではいかない」。でも、そんなことは世の常。このベトナムの片隅で、ベトナム人に助けられ、友人に励まされてやっていけるこの状況があるだけでも幸せと思わなければ・・・。
6月号ができる頃までには、みんなが楽しみ集まってもらえるレストランをがんばって完成させますので、その時はぜひ来てくださいね。軌道に乗ればレストラン内のステージで、アオザイファッションショーも予定しています。
文=八木 伸樹
(ベトナムスケッチ2003年6月号) |