ベトナム雑貨よもやま話
お仏壇をオーダーしよう
私共の店では木製品も扱っているので、多くのベトナム家具工場との取引がある。
ある日、家具工場のセールスがお店にやってきて、「これは売れないか」と言う。大きな梱包を解いて見ると中に入っていたのはなんと「お仏壇」ではないか!
うちもいろいろな商品を扱ってきたがお仏壇は初めての経験。家具工場のセールス曰く、「日本人のお客様からオーダーをもらって作ったんだ。だからおまえのところでも売れるはずだ」。
何でもトライの精神で置いてみることに。ところがこれがお客様には珍しいらしく、結構見る人が多いのだ。とは言ってもうちのお客様は旅行中の観光客がほとんど。突然入った店にお仏壇があっても、もの珍しさだけで実際に「買おう」と言う気持ちになる人はいないだろうと思っていた。
ところがある日、お仏像を買ってくださったお客様が「仏壇もあるんだ」と興味気味に見られていたので「どうですか」とお話ししてみたところ「仏壇を欲しいと思っていたので買いたいのだがもっと大きいのないの」と言われた。
実際、当店に置いてある仏壇も一般に想像する大きさからみればとても大きいのだが、このお客様はもっと大きいものが欲しいらしい。工場に問い合わせたが在庫は無いとのことなので「それではオーダー頂いて作ってみましょうか」ということになった。
大きさはなんと幅160cm、高さ180cmというとてつもなく大きいもの。なんでも家に仏間をお持ちだそうで、そこにピッタリきれいに収まる大きさの仏壇を探しておられたそうだ。でも日本は既製品しかなく、丁度いい大きさが見つからなかったということ。
早速、お客様と細部のリクエストや家紋をいれる場所などを話し合い、まずはオーダーを頂いた。これを工場に持って行き打ち合わせ、工場のセールスもびっくりして「大丈夫かなー」と弱気な発言。「もともとはおまえが持ってきた話だろ、とにかく頑張れ」と気合をいれて発注完了。それから完成までの2ヶ月はとても大変だった。なんと言ってもお仏壇、仏様が入るものなのだから細心の注意を払って作らなければならないのは当然。
また日本の美的感覚とベトナムのそれが少しずれているので細かく見ていなければならない。完成してからの手直しはとても大変なので、途中のチェックが重要になる。ようやく完成。自分ながらに良い出来栄えだと自己満足。
ただこれからがもうひと作業、商品を無事にお客様の自宅に届けて初めて安心できる。運送会社にしつこいくらいお願いし、何とか無事にお客様宅に着いたとの連絡「あ〜、やっと一安心」。ベトナムにいるとほんとうに色々な物を頼まれる。 もちろん頼んで頂けるお客様がいるのでこうやってお店がやっていけるのだ。これからもいろいろな商品にチャレンジしていくつもりだ。
縁があってお手伝いした商品、お客様に喜んでいただき末永く使って頂ければこんなに嬉しい事はない。
文=八木 伸樹
(ベトナムスケッチ2003年3月号) |