小銭の持ち合わせがない
ベトナム人のリップサービスの良さには、常々感心させられます。「 (デップ クワー!) 綺麗ですね」「 (デップ チャーイ クワー!) カッコいいよね」は、もう挨拶代わり。良くも悪くも、思ったことを素直にそのまま口にするベトナムの人々は、褒め言葉も出し惜しみしません。
でも、まるで褒め殺しのように「 (デップ クワー!デップ クワー!)」と言われ続けると、いちいちお礼をいうのも疲れます。褒め言葉を黙殺することなく、ベトナム流に会話を「笑い」で締めくくれる。「 (ホン コー ティエン レー) 」とは、そんな便利な表現です。
「 (ホン コー)」 は「ない」、「 (ティエン) 」は「お金」、「 (レー)」 は「少ない」で、「小銭の持ち合わせがない」という意味。 それでは、褒め言葉への返事に突然、なぜお金が出てくるかというと、その背景に「褒めたから、お礼に何かくれ」というベトナム流ジョーク(半分本気?)があるためです。「 (デップ クワー!) 」と言う人に「 (ホン コー ティエン レー!) 」と返せば、「褒めてくれてありがたいんだけど、あいにくチップの持ち合わせがなくて」という意味に。ニュアンスによっては「そんなありきたりの褒め言葉じゃ、小銭くらいの価値しかないけど、それもないわ。」となります。相手は「綺麗な上に、ベトナム流のジョークを知ってる!」と大喜び。みんな笑顔でその場を収め(?)られること確実です。
ちなみに、「 (ティエン ロク クン ドゥオック) 大きいお金(お札)でもいいよ」とさらに切り返されることもあります。ベトナム人は、徹底的に冗談好きな人々なのでした。
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