負けてちょうだい
都市のデパートや一部の店では、「定価」の概念が定着してきた感のあるベトナム。とはいえ、市場や小さな商店では、まだまだ値段交渉が当たり前。買い手と売り手の駆け引きは、ベトナム文化の一部なのです。
でも、幼い頃から鍛え上げられ、この道何十年という百戦錬磨のおばちゃんたちを相手に値引きを頼むのはかなり大変。かといって、言い値で買うのはちょっとくやしい。値段を聞いたら、とりあえず言ってみたい言葉が「」(ボッ ディー!)。
ここで言葉の解説を少々。「 」(ボット)とは「減らす」、「」(ディー)は人に「〜してちょうだい」という時、文末につける言葉。つまり「負けてちょうだい」と頼む表現なのです。ただ、お願いしたからと言って「ああ、それもそうだね」と簡単に値引きしてくれるかといえば、大間違い。外国人がベトナム語で交渉しようとしてることを、笑顔で評価してくれるかもしれませんが、ビジネスはビジネス。「これはベトナム人価格なんだからね。これ以上安くしたら、うちは商売あがったりだよ。」とまくし立てられることもあります。
それでも負けず、「何とかの一つ覚え」みたいに「」(ボッディー!ボッディー!)と繰り返していれば、ちょっと値段を下げてくれることもあるのです。ちなみに、それがたとえ1000ドン(約8円)であっても、負けてくれたらしめたもの。すかさず「」(ボッ ヌア ディー!)[もっと負けてよ!]と食い下がって、足元を見られないようにすることが、市場という戦場での戦い方なのです。
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