ベトナム旅行に行く前にちょっとみるベトナム情報サイト | ベトナム旅行手配 | 空港 | ベトナム地図 | ベトナムディレクトリ | |
|
||||||||||||||||||||||
|
|
ベトナムの家具製作会社で技術指導や商品開発に取り組む片岡さんは、家具製作一筋55年というベテラン。彼がこの世界に入ったのは昭和30年代、まさに日本の高度成長期のことだ。テレビや冷蔵庫など家電製品が中流家庭に普及し始め、人びとは食器棚やダイニングテーブルなどの洋風家具を欲するようになっていた。 「家具製作が、職人の手作りから機械を使った大量生産へと移りつつある時代でもありました。当時23歳で工場長に抜擢されたものの、高価な機械類が手に入らず苦労していました。仕方なく、自分で機械を作ることにしたんです」。 そこで彼が通ったのは小さな旋盤工場。日夜工夫を重ね、効率よく家具を作れる機械を考案し続けた。このときの経験がその後、十分な機材が揃わない発展途上国での家具製作指導に生きることになる。 「その後独立して家具製作会社を経営していたのですが、60歳で引退して間もなく、家内を急な病いで亡くしました。ひとりでのんびりするのも虚しく感じていたところ、中国で家具製作の指導をしないかとの誘いを受け、行くことにしたんです」。 技術指導や工場立ち上げなどを7年間経験したのち、今度はベトナムの工場から誘われハノイへ。 「ベトナムに来て、いっぺんにこの国が好きになりました。人びとが希望を持ち、幸せそうに暮らしているという印象を持ったからです。しかも驚いたことに、着任した工場には、私が日本で会社を経営していたときに売り払った機械が、回りまわって使われていたのです。それもあって、この国には運命のようなものを感じました。今ではベトナムに、骨をうずめてもいいとさえ思っています」。 現在のベトナムは、彼が家具製作を始めた頃の日本に似ているという。伝統的なベトナムの家具から洋風家具へ、職人が細かな彫刻を施す手作りから機械を使った大量生産へ。まさに日本の高度成長期における家具製作現場と同じなのだ。そのため、これまでの経験を最大限に生かすことができている。 「最初に求められたのは、日本市場向けの家具をいかに安く作るか、というものでした。しかし、日本で家具のシェアの大半を占める中国が、最新の家具製作機械を安く自国で調達できるのに対し、ベトナムは海外からの、性能が劣るにもかかわらず高価な中古機種が主流。商品価格では太刀打ちできません。それよりも国内に目を向け、安価で品質の良い家具を作り、ベトナムの家庭に普及させることを目指すべきだと考えるようになりました」。 現在、ベトナムの人びとの目は家電製品やバイクなどに集まっている。しかしそれらが一般家庭にいき渡れば、かつての日本がそうであったように、次に求めるのは洋風家具になるはず、と片岡さん。 「その国の文明度は、ダイニングテーブルがどれだけ普及しているかで計れると、私は考えています。地面に敷いたゴザや丈の低いちゃぶ台の上ではなく、ダイニングテーブルの上に並べられた料理を家族みんなで囲む、そんな光景をベトナム中の家庭で実現するのが私の夢です。全体の生活水準が上がることも必要ですが、私にできることもあるはずだと思うのです」。 70歳という年齢を感じさせないほど若々しい片岡さんの挑戦は、まだまだ続きそうだ。 (2010年2月号/ 2010年1月26日 火曜日 15:23 JST更新) |
|