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「始まりは偶然の出会いからでした。夫の赴任で住むようになったハノイで知り合った方の親戚に、ハー(Ha)さんという全盲の女性がいらして。日本への一時帰国の際、研修で日本滞在中だという彼女に、ことづけ物を頼まれたんです」。 ハーさんが参加していたのは、「国連・アジア太平洋障がい者の10年」事業の一環である、障がい者リーダー育成のための研修だった。 「日本で初めてハーさんに会ったとき、彼女の聡明さに感銘を受けました。それで、彼女がハノイに戻ったら手助けしたいと、研修所で相談したんです。視覚障がい者のためのインフラが整わないハノイでは、1人で出歩くことさえままならないだろうと考えたからです」。 しかしそこで、個人的に彼女を助けるのは簡単だが、それでは障がい者リーダー育成研修の意味がない、と言われてしまう。 「障がい者支援について、深く考えるきっかけになったひと言でした。そんなとき、ベトナムで活動するNPO『民族フォーラム』を知り、手伝うようになったんです」 当時、この団体は日本の外務省の草の根援助を受け、ベトナム盲人協会(VBA)への点字プリンターの導入や、ベトナム語の読みあげソフトの開発に携わっていた。新村さんはIT関連の職に就いていたことがあり、その経験を生かせるのも大きかった。 「ベトナムは戦争の影響もあり、人口に占める障がい者の割合が高いのですが、社会参画や教育環境は、けっして良いとはいえません。VBAに導入した点字プリンターは現在、マッサージ技術説明書といった職業訓練マニュアルなどの印刷に活用され、大いに役立っています。でも、点字教科書については、文字のみのものは印刷できるようになりましたが、図表入りはまだありません。そのような教科書を作るには、図表を凹凸で表現できるサーモプリンターが必要なんです」。 現在、ハノイなどの都市部には、計3校の盲学校がある。比較的援助に恵まれているこれらの学校には、点字プリンターはもちろん、サーモプリンターもあり、点字教科書も子どもたちに行き渡っている。 「一方、盲学校のない地方の子どもたちは、VBAが主催するプレスクールで点字を覚えたのち、普通校に通っています。でも、盲学校とは管轄が異なるVBAにはサーモプリンターがなく、子どもたちは十分に点字教科書が揃わないまま、点字を解さない教師のもとで授業を受けざるをえないんです。この現状を何とかしたいと、図表を描ける無料ソフトの改良を試みるなど、私たちは模索を続けています。一番いいのは、盲学校のサーモプリンターをVBAでも使用させてもらうことなんですが…」。 ここで問題になるのが日本と同じく、役所の縦割り行政だ。 「異なる省庁が所有する点字や音声のデータをデータベース化して、みんなが共有できるようにしたいんですが、そこにも管轄の壁が立ちふさがってるんですよね。でもその壁も、海外の非営利団体だからこそ越えられるのではと、希望を持っています」。 今後もじっくりハノイに腰を落ち着けて、視覚障がい者の支援に努めていくという新村さん。 「私たちの目的は、障がい者が自立して生きていけるようにすること。だから、私たちが必要なくなるのが、理想ではあるんですけれどね」。 (2009年4月号/ 2009年5月20日 水曜日 15:46 JST更新) |
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