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2008年6月1日、ホーチミン市テレビ3(HTV3)が生まれ変わった。番組制作やテレビ・メディアスクール、出版など、包括的にメディア事業を推進する民間企業「TVM」が、国営テレビ局「HTV」と組むという全く新しい試みが開始されたのだ。 そんな「TVM」で指揮を取る1人が成木ゆかりさん。彼女は仏・パリのテレビ業界でプロデューサーとして20年近く活躍してきた。 「小さい頃から海外の事情に興味があって。特に世界中を行くドキュメンタリーが好きだったんです」。 仏時代からベトナムに親しみを持ち、「全く社会体制の違う国へ行きたい」という思いが強まっていた矢先、TVMからの誘いでベトナムへ。そこで彼女は現地のテレビ事情を目の当たりにする。 「ベトナムのテレビ番組の大半が輸入コンテンツなんです。世界的に有名な番組だって、もとは特定の国の視聴者を対象にしているもの。クリエイティブな企画やローカル番組の大切さを、もっと分かってもらいたいと強く思いました。番組は、聴衆にとって面白くないと意味がないですから」。 その国の人が楽しめる番組こそ、視聴者が求めるものだと言い切る成木さん。ではベトナムのテレビ番組に必要なものは何だろうか。 「まず発展性がないといけません。ヒット作のような『強い』コンテンツというのは、テレビだけでなく、マーチャンダイズ、デジタルディストリビューションなど、やがて世界へと広がっていく。制作段階でこのことが頭にないと、これはできませんよ」。 テレビだけで終わらない、そんなローカル番組の実現を成木さんは目指しているのだ。とはいえ、メディアが一方的に押し付けるような姿勢を彼女は強く否定する。 「制作側の人間は、頭でっかちになっちゃいけない。人の声に常に敏感でいて、耳を傾けないと良い番組にはならないんです。でも、その中に浸かっちゃいけない。人の一歩先を指しながら、でも見下すことなく、視点がずれていない、人に近いコンテンツ作りを心がけることが大切なんです」。 それでは、ベトナム人が「近い」と共感できる番組制作に、外国人がどう関われるのか。それについても、彼女は明確に答えてくれる。 「技術的な面で、ベトナム人だけじゃできないことはあるんです。外国人が手を貸し、ベトナム人と手を結ぶことで理想のコンテンツができる。けれど結局、制作に関しては、やはりひとつひとつ丁寧につくるしかない。儲けることだけ考えてたら無理ですよ」。 とはいえテレビを支えているのは、やはりCM。実際、企業広告はその約7割がテレビCMだという。でもだからこそ、面白いテレビコンテンツが必要だと彼女は語る。「ベトナムの、ベトナム人による、ベトナム人のための番組を作る」ことが大切なのだと。 「CMを優先するあまり、番組時間がカットされてしまったり、制作費が他に回されてしまったりというのが現状です。だからこそ、ベトナム独自の面白い番組で視聴者を惹きつける、従来のテレビの形を目指していきたいですね。聴衆は馬鹿じゃない。良いものを作ればそう反応してくれるし、面白ければ人はついてくるんです。オリジナル性、発展性をもっと伸ばしていくことで、ベトナムのテレビはもっと面白くなりますよ」。 (2008年7月号 | 2008年7月15日 火曜日 9:57 JST更新) |
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