白井拓史さん
(ロータスクリニック院長)
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日本で当たり前の医療を
ベトナムで普通に受けられるように
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プロフィール
白井拓史 しらいたくし
1968年、東京都生まれ。千葉大学医学部卒業、医学博士。船橋市立医療センター、千葉大学医学部付属病院などの勤務を経て、2000年より第42次南極地域観測隊に参加。その後、上海での日系クリニック立ち上げなどを経験し、2007年8月、ホーチミン市に「ロータスクリニック(www.lotus-clinic.com)」を開院。
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2007年8月にオープンした、ベトナム初の日系クリニック「ロータスクリニック / LOTUS CLINIC」。ホーチミン市の中心街に位置し、街のお医者さんとして早くも在留邦人から厚い信頼を得ている。そのクリニックの院長がこの白井拓史さん。医療隊員として南極地域観測隊へ参加したり、中国・上海で日系クリニックを立ち上げたりと、海外そして極地での医療に長年携わってきた人物だ。
「日本国外で生活する日本人には、日常生活の中で知らないうちにストレスを抱え込み、体調を崩す方が大勢います。また、日本以上に忙しい日々を過ごしている方も多いので、日本と同じような環境で気軽に受診してもらえる場所を作りたかったのです」。
同クリニックは白井さんはじめ、「海外在住の日本人が安心して受診できる場を提供したい」との想いを持つ日本の医師たちの手により設立された。そのため白井さん、3名の日本人看護師、そしてスタッフが、受付から各種検査、診療、会計まで全て日本語で対応し、白色を基調とした清潔な院内も、まるで日本の病院そのものといった雰囲気となっている。
「もちろん国それぞれで医療の方法・基準は違います。ベトナムと日本の医療を比べてどちらが良い、ということはありません。しかし、病気の時は誰もが不安になるもの。そんな時だからこそ、言葉や診察の手順などの違いに気疲れすることなく受診したい、そんな要望に応えられればと考えているのです」。
そんな彼らが提供する安心は会話だけではない。処方される1つ1つの薬に対して用法を記した日本語の説明書を添付、企業で行われる健康診断の診断書も日本語で解説されたものを用意している。さらに子供連れでの来院に配慮し、院内にキッズルームや授乳室を完備するなど、徹底して日本と同等の医療サービスを心がけているそうだ。
「日系のクリニックだからといって、他より格段に高い技術や特別な薬剤を持っている、ということではありません。私たちが目指すのは、日本で受けられる普通の医療を、このベトナムでも当たり前に受けられるようにしたいのです」。
そうした環境作りの噂を聞きつけ、ダナンやハノイ、カンボジアなど、ホーチミン市以外から来院する人も少なくないという。
「大きな病気や怪我だけでなく、下痢や食あたり、風邪、喘息、道路の段差による捻挫など、ベトナムでの日常生活で起こる不調、怪我、病気の時に気軽に受診できる、そういう場所を提供できればと思っています。時間がない人のために、血液検査の結果なども数十分でお渡しできるようにしていますし、肝炎や破傷風、狂犬病などの予防接種も取り揃えています。また流れ作業ではなく、ゆっくりと時間をかけて診察、説明できるように完全予約制としました」。
そんな同クリニックでは、より多くの患者に対応できるよう、今後、日本から日本人医師が増員になる予定とのこと。
「もちろん病院ですので、来る必要がないに越したことはありません。しかし、何かがあった際、または来なくてすむように、日頃から気軽に健康管理ができるクリニックとして、親しんでもらえればと思っています」。
(2008年3月号/2008年3月14日 金曜日 11:24JST更新) |