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繁華街から少し外れるだけで、数多くの釣り堀があり、その他、街中の川や池など、そこかしこで釣りを楽しむ人々の姿が見られるホーチミン市の7区。森山猛さんが営む「フンファットタン Hung Phat Thanh」には、ダイワやシマノの名がついた、日本の釣り竿やリールなどの釣り具が、ずらりと並んでいる。 「ベトナムで売られている釣具は中国や韓国、ベトナムメーカーのものが大半。日本メーカーのものはほとんどありません。でも、ダイワやシマノの製品の良さは誰もが知っている。そこで家業である釣り具屋をベトナムでも開いてみようと思ったんです」。 日本の長崎にある釣り具店の2代目である森山さん。そうは言うものの、ものによってはリール1つで800US$もする日本メーカーの釣り具。到底ベトナム人が簡単に買える値段ではない。 「誰もが『高い!』って口を揃えます。でも最近はベトナムにも富裕層が多く生まれています。釣りはあくまで趣味のもの。お金が無いとなかなかできません。ですが、その趣味にお金をかけられる人が増えているのを肌で感じています。実際は『釣り上げた魚を食べたい!』という人がまだ大半ですけどね」。 そんな趣味人の増加もあってか、彼の店の客は90%以上がベトナム人という。 「でも、同じ釣りをするにも使う道具は全く違います。日本ではいかに細い竿、小さいリールで大物を釣り上げるか、が楽しみ方の主流。ところがベトナム人はとにかく大きな道具が好きなんです。釣り竿は硬く太く、長いもの。針も大きく、リールも船釣りで使うような巨大なものを平気で釣り堀で使うんですよ」。 店を訪れるベトナム人客に対し、商品ひとつひとつを説明するという森山さん。しかし、中にはそのアドバイスを聞き入れない人も多いという。 「とにかく大物狙いが基本。それには大きなものが必要だと思いこんでいるんです。また、今の日本では大物だけでなく、小さな魚との駆け引きも醍醐味とされていますが、楽しみ方が違うから、欲しい釣り具も違う。まるで昔の日本のようです。ただ、そんな違いはあっても、多くの人が釣りに親しんでいます。ベトナム人釣りクラブなどもあり、中にはわざわざ船を借り、コンダオ(Con Dao)群島まで出かける人もいるほどなんです」。 ベトナムはまだ、釣りの楽しみ方が発展途上という森山さん。そのため、彼の店ではベトナム人が知らない用具は、使い方のサンプルを作り、実際に手で触れて理解できるような工夫もしている。 「ベトナムの海岸線は砂浜が多く、磯や桟橋が少ないため、手軽に海釣りはできません。しかし、川や釣り堀など、身近な釣り場には恵まれています。しかも日本では考えられないような、大自然そのままの大きな池を使った釣り堀もある。もちろん自然そのものですから釣り自体は難しいですが、そのぶんレベルの高い釣りもできるんです。用具も釣り方も楽しみ方も、ベトナム人のレベルはまだまだですが、せっかく気軽にチャレンジできる場所の多いベトナム。色々な道具を知って、触れて、もっと釣りの多彩な楽しみ方を知ってもらえればいいですね」。 (2007年7月号/2007年7月20日 金曜日 10:13 JST更新) |
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