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深緑色の黒板を前に、先生の話に熱心に耳を傾ける男の子や女の子たち。ここはホーチミン市7区にある、とある一軒家。3区にあるカトリック教会の名を付けたこの「セント・ビンソン・チャリティ小学校」には毎日、数多くの子供たちが通ってきている。 「最初は約20名からのスタートでした。でも徐々に生徒が増え、1年生から5年生まで、今では130人ほどの子供たちが在学しています」。 藤牧勝久さんが、オアン(Oanh)夫人と共にこの小学校を創立したのは1999年9月のこと。生徒はメコンデルタなど、主に地方からホーチミン市へ出てきた家庭の子供たちだ。 「実は、地方よりも都会の方が学校に通いづらいんです。ベトナムの学校は、公立とはいえ、学校ごとに学費が違います。都会の学校は学費が高く、地方から仕事を求めてやってきた家庭の中には、経済的理由から、子供を学校に通わせるのが難しい人もいるんです」。 藤牧さんの学校ができる以前、市内中心部からほど近い場所にもかかわらず、家庭の重要な働き手として学校に通えない子供たちが大勢いた。そこで、その状況を見かねた藤牧さんは、無料で通える私立学校を作ることにしたという。 「でも、最初はなかなか受け入れてもらえませんでした。子供とはいえ、立派に収入があるわけですから。働く代わりに学校へ行けば、一家の収入が減り、生活が苦しくなる。どの家庭もなかなか子供たちを通わせてくれませんでした」。 しかし、彼の学校は定時制。授業は午前か午後のクラスのみのため、残りの時間は学校がビーズアクセサリー作りなどの仕事を子供たちに依託。その商品を学校が買い取り、一家の収入を補うことで、徐々に生徒が集まってきたという。 「子供たちが作った商品は、日本にある教会や、私の母校で行われるバザーなどで販売しています。フェアトレードという形で学校の運営にあてているんです。学費は無料ですが、そうした労働があることで、単に援助を受けるのではなく、『自分の力で学校へ通っている』という自立心も育てていければ、と思っているんです」。 そう語る藤牧さんの学校は、近隣にある「レヴァンタム(Le Van Tham)公立小学校」の私立の分校となっている。つまり、単に学習するだけでなく、卒業時には政府発行のレヴァンタム小学校卒業証書も交付されるのだ。 「今のベトナム、特に都市部では、少なくとも小学校を卒業していないと、進学はもちろん、就職も難しくなってきています。ホーチミン市内には、識字教室のような施設が数多くありますが、そこで学んだとしても、正式な卒業証書を手にすることはできません。たかが証書、ですが将来のためには本当に重要なもの。だからあくまでも私は、卒業資格が与えられる学校にこだわりたいんです」。 そんな藤牧さんは現在、新たな目標として、全日制の無料小学校の設立を計画している。既に政府の内定も得、創立されればホーチミン市初の無料の全日制私立小学校になるという。 「早ければ2007年度中に作りたいですね」。 そう語る彼の顔には、まるで子供たちと同じような、自信と希望にあふれた笑顔があった。 (2007年3月号/2007年3月12日 月曜日 10:27 JST更新) |
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