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「マッサージといえば、日本ではお年寄りが行くところというイメージがあるでしょう。ところがベトナムでは若い客も多い。若い人も年寄りも、とにかくいろんな人が来るんです」。 良質のマッサージを手頃な料金で提供し、在住外国人やベトナム人の間で人気のマッサージ院「ゴックアン(Ngoc Anh)」。そのオーナーである山田尊康さんは、南国暮らしの長さを物語る小麦色の顔に笑顔をたたえながら、少し早口にそう語ってくれた。 日本でも最近ブームのマッサージ。だが日本では料金も高く、まだまだ気軽に行ける場所ではない。しかしベトナムでは、マッサージは体の不調を治す最も手軽な手段。夜になると鳴り物を鳴らしながら自転車で家々を回る吸玉(ヤッホイ)屋もいれば、体調を崩したと言っては背中や首に赤紫の斑点(カオヨーというオイルマッサージの跡)をつけて現れる人が、若い人の間にも普通にいる。 「サイゴンプリンスホテル(現ダクストンホテル)内のマッサージ店で働いていた家内のマッサージがとても良かった。毎回彼女を指名して、それがきっかけで交際が始まったんです」。 山田さんが仕事の関係からベトナムを訪れだした当初、彼はマッサージを受ける1人の客だった。しかし後に結婚し奥様となるアン(Anh)さんと出会い、意気投合。2人は1996年、ホーチミン市にあるカクマンタンタム(Cach Mang Thang Tam)通りにマッサージ院「ゴックアン」をオープンする。ちなみに店名は奥様の名前からつけられたもの。開店当時、マッサージ店はホテルにあるものばかりで、個人経営の店は少なく、最初の年は赤字だったが、1〜2年後から徐々に口コミで客が増えていったという。 「ベトナムのマッサージは香港式が基本。でも、それはツボを直接刺激するのではなく、ツボのある部分をつないだラインを押すだけのもの。それがどうしても物足りなかったんです。そこで香港式、タイ式マッサージをメインに、日本の指圧も取り入れたオリジナルのマッサージを作ったんです」。 山田さんのアドバイスを受け、もともとマッサージ師であったアンさんだが、改めて香港、タイ、日本と、それぞれの本場で施術法を学び直した。通常、マッサージをひと通り覚えるには、約1〜2ヶ月の期間が必要だが、それを彼女自ら、1人1人のスタッフに指導。また、日本の指圧学校から講師を招待し、スタッフの講習も行っているという。そうした努力が実ってか、現在ゴックアンはホーチミン市内に5店舗を構えるまで成長した。 「規模が大きくなったからといって質を落としてはいけない。腕前をチェックするために、1日に6人ものスタッフのマッサージを受けることがあるんです。マッサージの受けすぎで、もみ返しがきて大変なんですよ(笑)」。 家庭の、そして仕事のパートナーであるアンさんを信頼し、現在、社長業を任せている山田さん。自称「髪結い亭主」と言ってはいるが、実際は厳しい監視役として常にアンさんをサポートしているのだ。夫婦2人3脚のたゆまぬ努力で育まれたマッサージ院「ゴックアン」。今日もその店は、国籍を問わず、老いも若きも疲れを癒しに立ち寄る、憩いの場になっていた。 (2007年2月号/2007年2月7日 水曜日 10:48 JST更新) |
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