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壁一面に隙間なく置かれた本棚に、ぎっしりと詰まった文献の数々。ベトナム宗教史研究家、大西和彦さんの自宅兼仕事場には、200年前に発行された道教の儀式目録など、珍しい資料が所狭しと並んでいる。 「シルクロードに憧れて、大学で東洋史学を専攻しました。ところが、シルクロードに関する有名な論文は、英、仏、独語で書かれたものが多く、これが読めないと研究が進まない。しかもサンスクリット語も読めないとダメ。『手に負えない!』と思っていたところ、授業で『ベトナム中国関係史』という文献が紹介されました。日本語で書かれている上、本の中で紹介されている文献も、漢文が多かったんです。『これなら出来る!』と思いましたね。それに、この本の著者の1人であり、私が通っていた大学で非常勤講師をされていた藤原利一郎先生との出会いも、ベトナム史にはまるきっかけでした」。 外国語は苦手、でも漢文なら何とかなりそう…と始めたベトナム史。しかし、結局は資料を読むため、仏語も、もちろんベトナム語も勉強することになった。 「ベトナム語には苦労しましたね。81年頃から本格的に勉強を始めたのですが、ベトナム語の先生が南部出身で、発音が聞き取りづらかった。実は何度か挫折したんです。ところが90年頃に、ハノイ出身のベトナム人に出会いまして。発音がクリアで、なんとか理解できたんです」。 こうして、ようやくベトナム語に親近感を持てた大西さん。本格的に研究を進めるため、ベトナムへの移住を決意する。 「84年の9月に初めてベトナムに観光で来たのですが、このとき旅行で訪れたホーチミン市のとあるお寺で、日本では見たこともないような電飾ビカビカの仏像と、そこに集まる多くの信者を見たんです。信仰が脈々と生き続けていることが本当に実感できました。宗教はその国の『本音』が出るんですよ。例えばベトナム人が占いをするとき、必ずいい結果が出るまで続けます。その都合の良さが、ベトナムっぽさなんですね」。 宗教は、政治、経済、文化など、それを形成する人間の根本となるもの。もともと宗教史を研究すべくベトナムを訪れた大西さんだったが、この体験から、さらにベトナムの宗教に惹かれていったという。 「宗教は、ベトナムを知るためのいわば『万能薬』なんです。宗教を知れば、自ずとベトナムを深く知ることができる。しかも2002年頃から、今まで表に出てこなかった宗教の文献がいろいろ出てきた。何も体系立っていないと思われていた呪(まじな)いなどの民間信仰にも、きちんと体系があって、実は資格証まで発行していた、ということもわかってきたんです。遂にWTOにも加盟し、ベトナムは今後、国としての魅力をさらに増していかなければならない。そんなとき、国の強みを見つけるために、自国の宗教を見つめることが大切になってくる。私の研究が、その助けになればと思っています」。 実はベトナムに来る前、占い師に「ベトナムは暗剣殺(大凶)の方角」と言われてしまったという大西さん。しかし、ベトナム史というフィールドの全体像が、今やっと見えてきたと語る笑顔には、研究者としての喜びが溢れていた。 取材・文/島田むつみ (2007年1月号/2007年1月23日 火曜日 12:04JST更新) |
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