宇佐美 誠さん(日精樹脂工業ベトナム駐在員事務所所長)
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ラジコン飛行機を通して、
今のベトナムが見えてくるんです |
プロフィール
[うさみ まこと]
東京都生まれ。大の飛行機好きが高じて、大学の工学部機械工学科卒業後、航空整備学校にて学び、航空整備会社に入社。自家用小型飛行機や旅客機の整備を行う。飛行機に乗りたくて、海外営業所をもつ日精樹脂工業へ入社。同社ホーチミン市駐在員事務所所長。 |
大空を自由に飛ぶこと。このことに切ないまでの憧れを抱き、今ではベトナムでラジコン飛行機を飛ばしている人がいる。それが、宇佐美誠さんだ。
「人間は、動物ほど速くなくても、走ったり泳いだりできます。でも、たとえ小鳥のようにさえ、自力では飛ぶことはできない。この『人間にできない』点に、とても興味を惹かれたんです。」
初めての「飛行」体験は、中学生の時。友達がラジコン飛行機を飛ばすのを見て、自分でも購入。
「プラモデルよりも大きくて、しかもエンジンまでついてる(笑)。当時は、今のように飛行機に乗ることが身近ではなかっただけに、余計に飛ぶことへの憧れが強かったんでしょうね。」
それでも、中学生の趣味としては、とても高価なラジコン飛行機。本格的に関わるようになったきっかけは、約10年前。展示会会場でのことだ。
「初めは『いい大人が、まだ子供みたいなことをしてるんだな』と思ったんです。でも改めてカタログなどを見てみると、中学生の頃とは違い、今なら経済的にもラジコン飛行機ができることに気づいた。それで、また始めたんです。」
彼は飛行機好きが高じて航空整備士にもなったという経歴もさることながら、自分でラジコンを組み立て、さまざまな飛行法を競い合う競技会などにも参加していたという、かなりのこだわり派。所有する15機の飛行機のうち、ベトナムには現在7機があり、週末にはホーチミン市郊外で、ベトナム人たちと一緒に飛ばしている。
「ベトナムに赴任した際、私がラジコン飛行機を持っていることを知った不動産屋が、ベトナム人が飛行機を飛ばしている場所を教えてくれたんです。」
さっそく、彼は自分のラジコン飛行機を持ってそこを訪れた。
「外国人ということで、大歓迎されました。全部で20人くらい。市内にはラジコン店が5軒あるほか、ラジコン生産工場もあるんですよ。」
ラジコン飛行機を持つベトナム人は、医者や会社の経営者など。驚かされるのは、所有する飛行機自体の変化だという。
「1年半前は、完全自作の機体に古いエンジンをつけた飛行機を持っている人が大半でした。でも、今では日本と変わらないような、立派なエンジンを使う人がほとんど。無くても生きていけることにお金をかける余裕がある人たちが増えてきているんです。こうした面でも、ベトナムが金銭的に豊かになっているんだなあと思います。」
しかし、ベトナムにはラジコン飛行機の競技会もなければ、世界大会に出場する人もいない。ベトナム人は基本的に技術云々より、飛ばすこと自体を楽しんでいる。
「彼らはまだ技術が不足してます。ラジコン人口も、まだまだ少数ですしね。でも仕事を離れ、利害関係もない同じ趣味を持つ人たちが集まって、ラジコン飛行機で楽しく週末を過ごす。そんな過ごし方が、ベトナムでもできるんです。」
(2005年11月号/2005年11月23日 水曜日 8:45JST更新) |