佐藤栄一さん(VIJAGEMS セールスマネージャー)
|
ベトナム人にいつも気軽に
ジュエリーを身につけてほしい |
プロフィール
[さとう えいいち]
1968年山梨県生まれ。1993年、合弁会社「VIJAGEMS」の工場立ち上げ要員として渡越。以来、ベトナムを拠点に、ブランド「Colorat Collectie Tokyo」の営業に携わる。2005年9月には、ZEN PLAZAの1階にホーチミン市支店がオープンしたばかり。 |
「甲斐の水晶」として有名な山梨県は、研磨宝飾産業で知られる土地。そこで生まれた佐藤さんが、宝石に関わるようになったのは、自然なことだという。
「大学時代は、中国、香港、タイなど、アジアの各地をバックパッカーとして旅しました。その経験を買ってくれたのが、地元の知り合いの宝石会社社長。それが、宝石とベトナムに関わるようになったきっかけなんです。」
ベトナムで宝石、というと意外な感じがするが。
「主に北部で宝石が採れるんですよ。イェンバイ省のロックイェン鉱山ならルビーとサファイア。ラムドン省のジーリン鉱山でもサファイアが採れます。半輝石なら、ペリドット、アクアマリン、トパーズ、テクタイトなど。しかし、半輝石は宝石自体の価値が低い上、ベトナム産の宝石の大半は質が低いのが実情です。」
今から遡ること15年。ベトナムのゲアン省クイチャウ鉱山でスタールビーが発見され、大ブームが巻き起こった。スタールビーとは、光を当てるとまるで星のように六条の輝きを放つ輝石のこと。そこで、日系3社とベトナム重工業省(当時)の合弁会社ビジャジェムズ(VIJAGEMS)も、鉱山の発掘に乗り出した。
「でも、質のよいものが少ないなど、実際には思ったようには進まなかった。結局、会社は路線変更を余儀なくされたのです。」
ここで着目したのが、ベトナム人の手先の器用さと、安価な労働力。世界中から集められた宝石をベトナムで加工し、日本へ輸出する。その工場立ち上げに抜擢されたのが佐藤さんだったという訳だ。
「卒業を控え、実は旅行会社に内定していたんですけどね(笑)」
それでも、ベトナムに興味を持った彼は、まずタイで宝石の基礎知識を身につけ、ハノイへ。
「当時は、職人たちと生活を共にしていました。日本では弟子入りから一人前になるまで約5年、と言われているのですが、ベトナム人なら2〜3年。『ベトナム人は手先が器用』というのは本当だと実感しました。」
以来、ベトナムで12年。ここで加工された「コロラットコレクチェ(Colorat Collectie)」の高級ジュエリーは、日本の大手百貨店などで販売されている。
「ベトナムで『宝石』といえば、『換金用』というのが従来の考え方でしたが、ここ5年ほどの間に、デザイン重視の傾向が強まってきました。」
とはいえ、街中ではコピー商品や輸入品が主流。そんな中、石それぞれの個性を生かしたこのブランドのデザインが受け入れられ始め、歌手のタイン・ラムも常連客の一人だとか。
「お客様が喜ぶ瞬間を共有できるのが、この仕事で一番嬉しいことなんです。ベトナム人向けには、カジュアルジュエリーも扱っています。将来的にはやはりベトナムらしい、スタールビーも扱いたいですね。」
(2005年10月号/2005年10月25日 火曜日 8:42JST更新) |